エスクデロが嘆くのは、2月14日にシーズンが開幕するJリーグについてである。
産声を上げてから33年目を迎えた2025年、優勝争い予想よりも世間を賑わしているのが、アビスパ福岡の監督に任命された金明輝(43)の人間性と、このクラブを含む日本でまかり通る“常識”だ。
2021年末、金はサガン鳥栖の監督を降りた。トップチームのプロ、及びユース選手に対する暴行、暴言が明らかになったのだ。
選手の髪型が気に入らないと前髪を握ってビンタをしたり、「お前のパスはこうなんや」と言いながらボールをぶつけたり、トレーナーからケアを受けていた選手の頭を叩いて「お前が冷やす権利あんのか」と発言した。
ユースを含む若手にも日常的に「死ね」「殺すぞ」「消えろ」「お前の顔は気持ち悪い」「ハゲ」などの暴言を重ねていた。
こうした行動を問題視したサガン鳥栖が第三者委員会を設け、調査に乗り出すと、金はチーム関係者に対して口止めを指示、隠蔽工作を計った。
それを受けた日本サッカー協会は、金が持っていた指導者ライセンスを最上級のSから一つ下のAに降格させた。
その後、協会が作り上げた更生プログラムを受けさせ、2024年2月に再び金にS級を発行。町田ゼルビアのコーチを経て、今季より福岡で指揮を執ることとなった。
同協会の影山雅永技術委員長は2025年1月10日に、「金は制裁を受けた。過去に色々あったが周囲から応援してもらえる監督になってほしい。期待している」と擁護する発言をしている。
2年の謹慎と更生プログラムをこなせば、金の根幹が変わったという裁定だ。処分決定時の反町康治技術委員長も、金が更生プログラムを受ける前から「かなり厳しい、重い処分と言えるかもしれないが、本人ももう一度勉強して、指導の現場に立って欲しい」などとコメントしており、はじめから復帰ありきだったことが窺える。
エスクデロは呆れたように言葉を続けた。
「金がどんな人物であるかを理解しているのに、JFAは短期間で簡単にS級ライセンスを再発行してしまった。あり得ないことです。こんな調子では、日本のサッカーがダメになってしまいますよ。アルゼンチンで同様の問題を起こした人間は、二度と現場に立つことが出来ません。もう、どんなチームからも声が掛からない。小学生チームからもです。暴力指導者などサッカー界に必要なし、と受け止められます。
日本って本当に暴力やハラスメントが消えませんね。小学生の指導者が平気で暴言を吐く、高校の監督が暴力を使う。プロでさえ、こんな状態……。そういうコーチを見たり、聞いたりする度に、僕は心を痛めてきました。
いいですか。ディエゴ・マラドーナやリオネル・メッシは、殴られたり、暴言を浴びる環境でボールを蹴ってきていませんよ」

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