引用元: ・中国で横行する人身売買の闇「7万5000円」で売り飛ばされ、首輪で拘束された女性 [662593167]
● 首を鎖でつながれ 閉じ込められた女性 2022年に、衝撃的な事件が明らかになっていた。山東省に近い江蘇省の農村に住んでいた「首に鎖をつながれた8人の子どもの母」だ。日本でも一部で報道されたので、記憶にある読者もいるだろう。
この事件も1本の動画から始まった。北京冬季五輪を目前に控えた2022年1月27日夜、慈善活動家とされる男性が撮影した動画が瞬く間にSNSで拡散した。
江蘇省徐州市豊県董集で撮られたとされる動画には首に鎖をつながれ、農村の寒々しい小屋に閉じ込められた女性が映る。女性は真冬にもかかわらず薄着で、歯はほとんどない。撮影した男性は食べ物を与えて、コートを着せたが、女性は話が不明瞭で意思疎通も難しい。精神疾患があることがうかがえる。
女性の夫とされた50代の董志民氏は「子だくさんのパパ」として地元ではちょっとした有名人で、地元企業の広告にも出ていた。映像の撮影者はこの家庭をネット上で紹介しようとして現地を訪れたとみられるが、おそらくここまでの悲惨な境遇は想定していなかっただろう。
ちなみに中国のネット上では当時、貧しい農村などを訪れて衣服や金を恵む動画が珍しくなかった。慈善活動というよりネット上での閲覧数を稼ぐ目的とみられる動画も少なくない。
この動画の意図は不明だが、奴隷のような悲惨な境遇の女性を放置してきたとして地元当局への非難が噴出した。当初から、女性は人身売買の被害者で無理やり子どもを産まされたのではないかと見られていた。
● 当局は火消しを試みたが 人身売買であることが判明 批判を浴びた地元当局は当初、人身売買を否定して「女性には精神疾患があり、子どもを殴ることがあった」との調査結果を公表したが、鎖などによる拘束を正当化したとしてさらなる批判を招き、当局を批判するネット世論の火に油を注いだ。
当初は「県」(市より小さい行政単位、日本の郡に近い)が調査していたが、調査を行う行政レベルは県から市へと上がり、さらに最終的には江蘇省が「党中央の指示」によって調査に乗り出した。北京冬季五輪の祝祭ムードに影響が出はじめ、火消しに躍起となったとみられるが、ネット世論が当局を動かしたともいえる。
江蘇省は、地元当局の最初の発表から数えて通算6回目の発表で、延べ4600人に及ぶ関係者への聴取やDNA鑑定などの結果として、女性は雲南省の少数民族リス族出身の小花梅さん(44)と結論づけた。
発表によれば、小さんは1998年に地元から連れ去られて3回にわたって売られた末に董氏のもとにやってきた。董氏のほか売買に関わった男女ら計9人が逮捕・拘束され、地元政府幹部ら17人が処分された。2~23歳だった子ども8人は、DNA鑑定によって女性と董氏の実子と確認された。
● ネットで批判が上がった 「人身売買は不問」の判決 しかし判決に対して再びネット上で批判の声が上がった。矛先は、とくに董被告が虐待罪と違法監禁罪のみで有罪となったことに向けられた。理由は2つある。
1つは、董被告が人身売買罪に問われなかったことだ。中国では人身売買の買い手側の罰則は「3年以下の懲役」と定められている。最高刑が5年未満の罪は公訴時効が5年と定められ、董被告は人身売買については起訴されなかった。
一方、人身売買の売り手側は死刑が最高刑だ。最高刑が死刑か無期懲役の罪は、20年の時効を過ぎていても罪状が悪質である場合は起訴できる。
新華社によると、この事件で人身売買の売り手側の5人はこの規定に従って起訴された。なお、同じく売り手側だった他の2人については「罪状が比較的軽微」として起訴されなかったという。
中国では人身売買の買い手側の罪が軽いことにかねて批判があり、この事件が発覚した直後からあらためて注目が集まっていた。判決を機に買い手側の量刑を引き上げるべきだという議論が再燃した。世論に押される形で、将来的に法律改正などにつながる可能性もありそうだ。
● 強姦罪が不問にされたのは 「社会の安定」のためか
もう1つの理由は、董被告が強姦罪に問われなかったことだ。小さんは精神疾患が悪化したという17年以降も出産しているにもかかわらず、判決に関する官製メディアの報道は強姦罪について触れていない。
北京の人権派弁護士は「強姦罪に問われなかったのは、婚姻関係が有効であるという前提に基づく。強姦を繰り返して何人もの子どもを産ませたということは、事件の重要な部分ではないか」と憤る。
判決文の全文が公表されていないため(この点についても批判が出ている)、推測となるが、裁判所は董被告と小さんとされる女性の結婚の有効性について正面から検討していないとみられる。少なくとも結婚が無効という判断は下していない。
なぜ当局は強姦罪での立件を避けたのか。この弁護士は「人身売買によって連れてこられ、むりやり結婚させられた女性は中国の農村にかなり多い。この結婚を無効と判断すれば、結婚の無効を訴える人身売買被害者が大量に現れ、影響が大きくなりすぎるのを恐れたからではないか」と話し、習近平政権が重視する「社会の安定」を優先した結果と推測する。
実際に人身売買の被害者は中国社会に大量に存在する。この問題に詳しい識者は取材に「もっとも恐ろしいのは、何十年間も(小さんとされる)女性のような存在を誰も問題だと考えず、誰も彼女を救わなかったことだ」と話した。
近所の人たちや行政が女性の存在に気づいていなかったとは考えにくいとの指摘だ。そもそも「人身売買で買われてきた嫁」という存在を問題視する視点がなかったとみられる。
日本の闇バイトとも関係してくるだろう
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