それは人間の脳内で、幸福感や安らぎを生む神経伝達物質セロトニンの材料となる必須アミノ酸「トリプトファン」です。
もし科学的に断定されれば、地球外サンプルからトリプトファンが見つかるのは史上初になります。
これまでの研究で、リュウグウやベンヌなどの小惑星からは、多様なアミノ酸や核酸塩基(DNA・RNAの材料)が検出されてきました。
特にベンヌでは、生命の遺伝情報を構成する5種類すべて(※)の核酸塩基が確認されています。
(※ アデニン:A、シトシン:C、グアニン:G、チミン:T、ウラシル:U)
今回NASAとアリゾナ大学の研究チームが行った最新の分析では、過去研究で確認されていた14種類のアミノ酸に加え、複数の核酸塩基が再び検出されています。
さらに驚くべきことに、複数のサンプルの領域から「トリプトファン」の微弱なシグナルが検出されたのです。
トリプトファンは人間が体内でつくれない必須アミノ酸であり、地球では主に肉・魚・卵・乳製品・ナッツなどの食品から摂取します。
脳ではこれを使ってセロトニンとメラトニンを合成し、気分の安定や睡眠リズムを整えるなど、生命活動に不可欠な働きを担っています。
通常、トリプトファンは熱や衝撃に弱く、隕石として地球に落下する過程ではほとんど破壊されてしまうと考えられています。
そのため、これまで隕石からは一度も検出されていませんでした。
引用元: ・【NASA】小惑星ベンヌから「幸福感」を作り出す化学物質を発見か