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[新連載]日産、16年越しのエルグランド刷新 無視され続けた販売会社のSOS
玄 基正 日経ビジネス記者 2025.11.17
「国内事業を再始動させるモデルだ」。
日産自動車のイバン・エスピノーサ社長は10月29日、ジャパンモビリティショー(JMS)で新型のミニバン「エルグランド」を発表した。発売予定は2026年、フルモデルチェンジは16年ぶりとなる。新型電気自動車「リーフ」や軽自動車「ルークス」とともに、新車攻勢の中核を担う車種として期待が高まる。
だが、地方で日産販売店を営む社長は、苦々しい気持ちでそのプレゼンテーションの報道を見た。「何年も塩漬けにしておいて……。こんな無責任な話はない。とにかく安定的にクルマを供給してくれさえすれば、それでいいのに」
引用元: ・日産販社 新車開発を塩漬けにして自ら販売機会を逃してきた エルグランド発表にも怒りを隠さず [618719777]
日産の報道で遠のく客足
工場閉鎖や人員削減など、日産のネガティブなニュースが流れるたびに販売店への客足が遠のいた。この販社では新車の販売台数が多い月でも10台ほど。前年に比べて販売が2~3割下回る状況だ。糊口(ここう)をしのぐため中古車販売や車検、整備などサービス部門に人員を厚く配置し、売り上げの落ち込みをカバーしているという。
「日産は全てのスピードが遅かった。なぜ、これまで決断してこなかったのか」。販社社長は語気を強めて訴える。ここ数年、日産で繰り返されてきた「決断」の先送り。そのツケが新車不足、販売不振という形で国内の販売店に重くのし掛かっている。
事実、国内市場の販売は厳しい。日産の4~9月の販売台数は前年同期比で16.5%の減少。理由は売れ筋車種の少なさだ。同期間における新車販売ランキングではトップ10位に1車種も入らず、日産車の最上位は小型車「ノート」の15位という結果だった。
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新型車の投入が「他メーカーに比べてとにかく遅い」(販売社長)という機会損失によって、他社の新型モデルがシェアを奪っていく。その負のサイクルを象徴する車種が先代モデルから全面刷新までに16年かかったミニバン、エルグランドだ。
エルグランドは25年1~9月の販売台数が1275台だった。同期間で競合のミニバンと比べると、トヨタ自動車の「アルファード」が6万5975台売れている。同車種は23年6月に8年ぶりの全面刷新でテコ入れをしており、好調な販売を維持している。
ここ数年、日産は、カルロス・ゴーン氏から続いた拡大路線の軌道修正に腐心してきた。半導体不足や新型コロナウイルス禍など外部環境の逆風はあったものの、日産を今日の苦境に追い込んだ根源には「明らかな人為的ミスがある」(国内証券会社アナリスト)という。それが経営陣による長年にわたる決断の先送りだ。「先送り」の弊害を如実に示す事例が新車投入の遅れだろう。