中国で見せかけ融資横行、内需の弱さ露呈-実体経済に資金回らず
→銀行、政府設定の融資目標をクリアするため「貸してすぐ回収」
→潤沢な資金供給と弱い需要の構造的なミスマッチで銀行の競争激化
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-12/T5L5GZT96OSH00
引用元: ・経済減速の中国で『見せかけ融資』が横行 政府設定の目標クリアのため「貸してすぐ回収」する粉飾融資 [478973293]
中国東部で自動車部品会社を経営するジェリー・フー氏は10月、奇妙な依頼を受けた。国内大手銀行の融資担当者が、500万元(約1億円)を借り入れて、そのままその資金を預け入れ、翌月に返済してほしいと言ってきたのだ。利息は銀行が負担するという。
同氏は上海に近い浙江省で、安定した資金繰りと堅実な収益で優良顧客と見なされている。「彼らのマネジャーが何度も電話してきた」ので、「本当は融資は必要なかったが、協力することにした」と打ち明けた。
銀行が前例のない圧力を受け、実需では達成できない政府設定の目標をクリアするため、こうした「貸してすぐ回収」が広がっていると、20人近い銀行員への取材で分かった。
中国経済の減速がもたらす政策上の難題を浮き彫りにしている。資金を潤沢に安く提供する用意をしても、人々に借りて、使い、投資させることはできない。
目標は銀行ごとに異なるが、少なくとも前年並みの融資を供与するよう指示されていると、銀行員らは非公開の指示だとして匿名を条件に話した。
記録的に小さい利ざやと不良債権の増加で貸し手の負担が高まる中、年末に向けて借り手の数がさらに減るのではないかと銀行側は懸念している。
個人顧客にも同様の依頼が来ている。
浙江省の銀行に勤める女性は、複数の競合行から消費者ローンを借り、数日だけ保有して返済するよう求められたと氏名を伏せることを条件に明らかにした。
これらのケースでも銀行は利息負担を申し出ており、担当者が自腹でこの女性行員のような顧客の利息を支払うこともある。そうすれば再び同じ顧客に頼れるからだ。
国家金融監督管理総局(NFRA)はコメント要請にすぐに応じなかった。
悪い選択肢
事情に詳しい関係者によれば、財政省の地方局は最近、国有企業が融資平台に提供する融資保証の監督を大幅に強化した。これを受け、銀行は関連の融資基準を引き上げ、資金アクセスがさらに制限されたという。
財政省はコメント要請に直ちに応じなかった。
内需の弱さを示す別の兆しとして、年初来の固定資産投資は20年以来の減少となっている。経済成長率は今年、約5%の目標達成に向かっているものの、多くのアナリストは10-12月期は22年の新型コロナ対策としてのロックダウン(都市封鎖)期以来最も低成長になると見込んでいる。
銀行の経営陣は2つの結末を想定しているが、いずれも良くない。より高いリスクを引き受けるか、目標未達に終わるかだ。