ここに集う若者たちは「トー横キッズ」と呼ばれ、非行や逸脱の象徴として語られる。しかし、その背景には家庭や学校での孤立、経済的困難などさまざまな事情がある。
こうした困難を抱える若者を支援する一般財団法人「ゆめいく」(天野将典代表理事)は、彼らとともに被災地に訪れる復興支援ボランティアを続けている。
参加者たちは何を思い、どう感じたのか。話を聞いた。(ライター・渋井哲也)
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今回初めて能登を訪れたというSさん(13歳)は、中学2年生の女子。
「学校ではハブられたり、『ブス』と言われたりしていて、小3の頃から『死にたい』と思っていました。気が弱いから何を言ってもいいと思われたんだと思います。友達に助けを求めたこともあったんですが、(意に反して)スクールカウンセラーや親にも伝わってしまった。辛さを抱えていると思われたくないから、相談するのも嫌だったのに…。
中学校や家でも『死にたい』という思いが消えず、インターネットで『トー横』を検索しました。悪い場所といううわさもあるけど、私にとっては居場所。トー横で出会った人々がいなければ今の私はいないです」
Sさんは、OD(オーバードーズ)や家出も経験した。市販薬のODをした後、飛び降りを考えたが、ODによって動けず、結果的に命拾いした。ただ、「(性の対象として)少女を狙う人や違法薬物が身近にある」というトー横の状態に嫌気が差し、今はさいたま市・大宮駅周辺の「大宮界隈」に出入りしているという。
能登に足を運んだのは「自分の目で見てみたい」と思ったからだったが、実際に被災地を訪れると「流木や土砂、家屋の崩壊に絶望感を抱いた」という。
「仮設住宅で10人以上の高齢者の女性と話しました。土砂崩れで松の木に掴まっていた家族が流された、という話も聞きました。家族を失った悲しみに比べ、自分の悩みがちっぽけに思えた。自分には家もあって、家族もいる。恵まれた環境にいると思うと同時に罪悪感も感じました」
引用元: ・【社会】トー横キッズ「自分は恵まれていた」能登ボランティアで生まれた“罪悪感” 被災地の現実が与えた「気づき」