庭を維持・管理しやすくする「庭じまい」。手入れが大変な樹木を伐採したり、枝を詰めたり、更地にしたりして負担を減らす。
住みながら、または空き家になった実家で行われることが多い。家じまい、墓じまいと同様、高齢社会の中で需要が増すとみられる。
■管理できる範囲に
「すっきりしましたね。手入れが楽になるわ」。埼玉県川越市の一軒家。10月上旬、庭の樹木が刈られていくと、この家に住む女性(78)が明るい声を上げた。
家は女性の実父が約50年前に建て、庭で柿や椿などさまざまな樹木や草花を丹精して育てた。
女性と夫は約20年前からこの家に住み、庭の手入れをしてきたが、最近、「脚立を立てて柿を取るのも、高い木を切るのも大変だ。
今後、茂る樹木で近隣に迷惑をかけるような事態は避けたい」と思うようになった。
思いを知った近所に住む息子が、庭じまいも手がける「長尾アートガーデン」(川越市)に連絡。代表の長尾崇史さんが今年2月に作業を始め、柿や数本の樹木を伐採。残しておく樹木も刈り込んだ。
この日は、残した樹木の伸びた部分を整えた。女性は「緑は好きだけど、先を考えると自分で世話ができる範囲にしなければと思った」と話す。
造園業を営む長尾さんがサイトに庭じまいのコーナーを設けたのは昨年のこと。庭木の撤去などの依頼が増えてきたためだ。今では月5件ほどの庭じまいの依頼がある。
多くは子供世代からで、「親が施設に入所したので実家の庭木を伐採して」「親が高齢なので手入れが簡単な庭にして」といった内容だ。
長期間放置された庭は樹木が鬱蒼とし、近隣に枝や落ち葉が入り込むこともある。かなり繁茂していた家で作業したときは、近所の人に喜ばれたという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c20ad8a6ca0eca1743eda2db1d6745cc7dd887c4
引用元: ・転ばぬ先の庭じまい 「手入れできない」「近所迷惑にならぬように」 [567637504]
■見積もりを必ずとって
料金は「平均的な一軒家の庭じまいなら10万円台くらい」(長尾さん)というが、庭の状況や申込者の希望内容などによって大きく変わるので、事前の打ち合わせは欠かせない。
長尾さんは「地域をよく知る地元密着型の業者がおすすめだ」という。
不当に高額な料金を請求されないためには、見積もり、できれば相見積もりをとって、納得できる金額でなければ依頼しないことが大切だ。信頼できる人に同席してもらうこともトラブルの防止につながる。
庭の樹木には思い出が詰まっている場合が多い。「この子が生まれたときに植えた」という記念樹もある。
長尾さんは、庭じまいでやむを得ず伐採した記念樹や思い出の樹木から木工製品を作る取り組みを始めた。「家族の記憶を次世代につなげていければ」と話している。
■急増する空き家同様、子供世代には荷が重く
空き家は年々、増え続けている。一軒家の割合が高く、庭の管理に悩まされている人は多い。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、同年の空き家は約900万戸で、30年間で2倍に増加している。
この調査で空き家を持っている人を対象にした国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査結果」によると、空き家のうち約9割が一戸建てだった。
空き家を管理する上での心配事を聞いたところ(複数回答)、「樹木・雑草の繁茂」が58.0%で、2番目に多かった。
空き家問題に詳しいファイナンシャルプランナーの牧野寿和さんは「親世代は何とか庭を管理していても、子供世代は実家の庭に関わっていない。定期的に通って手入れをするのも荷が重くなる」と説明する。
空き家の庭を放置すると、枝が伸びたり、虫が発生したりして近隣に迷惑をかけることがある。
「空き家の使途を早めに決め、そこに向けた対応を庭にもする必要がある。ある程度のお金がかかることは心得ておくべきだ」という。
空き家問題を軽く見てはいけない