商機拡大の思惑
日立製作所が出資する米GEベルノバの子会社は、小型モジュール炉(SMR)を最大1000億ドルで建設することが盛り込まれた。日立は機器や技術の提供を検討する。また送配電設備の関連投資も計画する。
日立の徳永俊昭社長はこの日、ラトニック米商務長官と覚書を交わした。徳永氏は声明で「日米両政府の戦略的投資は、グローバルな社会インフラの発展とAI(人工知能)によるイノベーション(技術革新)を力強く後押しするものだ」と意欲を示した。
ほかにも原発関連プロジェクトが目立つ。米原子力大手ウェスチングハウスによる加圧水型軽水炉「AP1000」とSMRの建設事業には、三菱重工業や東芝、IHIなどが関与を検討する。
日米企業が関心を示している主な投資案件
IHIは2030年代に原子力事業の売上高を現在の2倍の1000億円規模に引き上げる目標を掲げている。原子力を成長分野と位置づける三菱重工もSMRを開発しており、日米協力を商機の拡大につなげられるか注目される。
AIブームで需要が高まる電力インフラの整備では、ソフトバンクグループ(SBG)が名を連ねた。米国内での電力インフラ整備や運用など最大250億ドルの事業を想定する。
米国で電力エネルギーシステム事業を手がける三菱電機も、データセンター向けの発電に関するシステムや関連機器の供給などに関心を示しており、追加投資額は最大で300億ドルに上る可能性がある。
「警告」とアピール
日米合意で日本側が約束した5500億ドル(約84兆円)の対米投資は、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)などによる出資や融資、融資保証を通じ、資金提供する計画だ。
投資先は日米両国でつくる協議委員会が、ラトニック商務長官を議長とする投資委員会(米国人のみで構成)と協議して絞り込む。投資委から候補の推薦を受けたトランプ米大統領が最終的に選定する。
日本が対米投資を実行しない場合、米側は関税を引き上げる可能性があると「警告」している。日本側は対米投資の早期実施をアピールしたい考えだが、民間企業が主体となるだけに、採算性やリスクの精査など慎重さも求められる。
野村総合研究所の木内登英氏は「実際には米国の製造業の復活と拡大に資する枠組みというのが米国の思惑だ。投資計画が不平等で日本の国益を損ねていないか、しっかり検証を続ける必要がある」と指摘する。
読売新聞 2025/10/29 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20251029-OYT1T50001/
引用元: ・「原発」「電力インフラ」など日米文書に並んだ対米投資プロジェクト、「採算性やリスク」精査が課題に [蚤の市★]