イスタンブール(CNN) ハマムの温かい抱擁に包まれると、周囲の音はくぐもって聞こえる。頭上にそびえる大型ドームのオキュリ(「目」の意味)から柔らかな光が差し込み、大理石の表面のあちこちに模様を描き出す。流れる水や静かに滴る蛇口の音が、まるで子守唄のように意識の端に届く。
蒸気が立ち込め、ほとんど神秘的な雰囲気さえ帯びるトルコ式風呂では、世界が静止する。
ハマムに行くのは、自宅の浴室内にいるのとは全く異なる体験だ。セラピストと2人だけになるデイスパの個室とも違う。
「浴室やシャワーでは自分1人になるが、ハマムは公共空間に当たる」。そう語るのは建築家で、トルコ式風呂の文化と歴史に詳しい専門家でもあるアフメト・ウードゥルリギル氏だ。「ハマムは社交の場。女性たちが家の外で許可なしに社交を楽しめる、歴史上でもユニークな場所だ」
かつて、裕福な家の女性は定期的にハマムを訪れていた。中には自宅にハマムを設ける人も。女性たちは皆、浮き彫り模様や宝石まであしらわれたハマム用の桶で体を流し、絹で刺しゅうされたサテン生地や、レースで縁取られたリネン、「ペシュテマル」と呼ばれるタオルも使用した。ペシュテマルの最高級品は伝統的に純綿でつくられ、ほつれを防止するため、ヘム縫いではなく手作業でセルビッジ仕上げにされている。
祈りから結婚、出産に至る各場面の清潔さに関しては、数々の高度なルールが何百年もの時を経て確立され、洗練されてきた。小さな町の女性は今でも、主婦としての役割から一息ついたり、息子の花嫁を探したりする目的でハマムを訪れる。
引用元: ・トルコ式風呂「ハマム」、その中で本当に起きていることとは? [nita★]
