寄稿・市川沙央さん 小説家
https://www.asahi.com/articles/AST991S3BT99UPQJ00FM.html
「対話でさぐる 共生の未来」
昨年秋に東京ミッドタウン八重洲カンファレンスで開催された朝日新聞社主催の一大イベント「朝日地球会議2024」のテーマです。SNSでフォローする作家さんの登壇告知ポストから興味を持ち、イベント内容を公式サイトでチェックした私は、とても驚いてしまいました。〔誰ひとり取り残さず、すべての人が暮らしやすい持続可能な地球と社会について、みなさまとともに考えていく「朝日地球会議」〕。輝かしい理念に続いて紹介される70人近い登壇者は、すべて元気そうな人ばかり。障害当事者や家族あるいは支援者の立場の人すら、一人もいないのです。高校生・大学生ゲストの10人を含めれば、登壇者合計76人中のゼロ。20以上を数えるプログラム(セッション)のテーマにも、障害者に関するものは一つもないようです。では会場参加者のアクセシビリティはどうなっているのかと、事務局に問い合わせてみたところ、各セッションに手話通訳も同時字幕も用意されていない旨のお返事をいただきました。
均質的な知性および移動や会話に困難のない健常な身体を持った人だけを76人も集めて、聴衆に聞こえや認知のアクセシビリティを保障する意志も感じられない「対話でさぐる 共生の未来」。朝日新聞は、いったい誰と、何と共生するつもりなんだろう。
……クマ?
「共生」は、地球環境や生物、異文化などさまざまな文脈で使われる言葉ではありますが、「共生社会」を検索すれば分かるように、我が国ではまず第一義に障害者の包摂を考えるための言葉だったはずです。とりわけて日本は「相模原障害者施設殺傷事件」という凄惨(せいさん)な障害者大量殺戮(さつりく)事件が起きた国なのですよ。あの事件以後の我が国で「共生」の語を使うことの意味と義務について、「朝日地球会議2024」の企画立案者と承認者の頭には一片も浮かぶことがなかったというなら、残念な思いを通り越して、何かもっと極めて深刻な問題が〈私〉とあなたがたの間に横たわっているのじゃないか。そんな疑いが湧いてくるのです。〈私〉とは一市民でありまた一障害者としてこの社会に暮らし、ついでに言えば朝日新聞デジタルを購読する一人でもある市川沙央という私のことですが。
アクセシビリティに関して無理な要求はしていません。同時期に東京国際フォーラムで行われていた東京都主催の「だれもが文化でつながる国際会議」では、手話通訳・同時字幕、パンフレットのテキストデータ提供があるだけでなく、それらアクセシビリティサポートの情報が公式サイトのトップに明記されています。ただでさえ障害者はどこへ行こうとしても下調べと事前連絡を課され〈問い合わせ疲れ〉をしています。そもそもドアが開いているかどうか分からない場所に、必要もないのにわざわざ行ってみようとは思わないでしょう。クローズドな健常者ファーストの場を作っておいて、あたかもサポートのニーズが存在しないように見せかける、それのどこが「対話でさぐる 共生の未来」なのでしょうか。重箱の隅をつつくようですが「朝日地球会議」公式Xは、8月末現在で投稿する画像にALT(代替テキスト)を付けてすらいませんね。
誤解のないように言っておきます。私は障害者への配慮の不足を批判しているのではない。
「共生」という語をめぐる思考の不徹底を問うているのです。
■「共生」をめぐる思考の不徹底
(字幕は付きませんがその代わり)各セッションの内容は後日、朝日新聞紙面や朝日新聞デジタルでご紹介予定です――と事務局から教えていただいたので、抄録記事を読みました。私は朝日新聞の現状認識に対して、なお疑問を深めざるを得ませんでした。
マイノリティの訴える困難や課題が、マジョリティの関心事にいつのまにかすり替えられ、小さく弱い声がかき消されてしまうのは、非常によくあることです。マイノリティの運動の簒奪(さんだつ)、などとも呼ばれています。しかしよりによって「共生」という言葉を簒奪するとは。障害者を対話(セッション)から排除し、人手不足が及ぼす今日明日の生活の不安、生存権すらおぼつかないかもしれない未来への危機感を、健常者の感覚で嗜好品の選択肢の問題に矮小(わいしょう)化してしまうとは、あまりにも恥ずべき簒奪だと思いませんか。
(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)
関連
「共生」への取り組み、強化します 市川沙央さんの寄稿を受けて 朝日新聞社
https://www.asahi.com/articles/DA3S16300654.html
引用元: ・【小説家】奪われた「共生」の言葉 障害者なき対話に市川沙央さんは思う [湛然★]
独身男性もホモもハゲもチビもデブも
貧乏人も大金持ちも赤ん坊もジジイも大谷も
そこにいないと納得しないって話になるやん
アホくさ
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