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有料記事 2025年7月18日 16時00分
【社説PLUS】社説を読む、社説がわかる
今回の参院選では、外国人受け入れをめぐる問題が大きな争点に浮上しています。
情勢調査によると、特に規制強化や権利縮小を掲げる政党に勢いがみられ、主要政党は軒並み、この問題に時間を割いて主張を展開しています。
社説をつくるにあたり、論説委員室で議論を重ねました。街頭演説では外国人差別を助長する激しい言葉も飛び交う背景に、何があるのか。欧米の状況と比較しながら、排外主義に立ち向かっていくにはどうしたらいいのか――。
社説を担当する論説委員室では、テーマに何を選び、誰にあててどう主張するのか、平日は毎日1~2時間程度、約30人で討議しています。扱うテーマを専門とする論説委員が、取材の蓄積や自らの問題意識に基づいてたたき台を示し、他の同僚たちも活発に意見を述べます。合議制で議論を練り上げ、全員の総意として社説に仕上げます。このため署名はありません。方向性がすっと定まる時もありますが、見解が真っ向から対立して紛糾する時もあれば、様々な観点から議論に「花が咲く」こともあります。この「社説PLUS」では、そんな論説委員室内の様子も合わせて紹介していきたいと思っています。
【7月13日(日)社説】
(中略)
在留外国人は昨年末で376万人。第2次政権が労働者の受け入れにかじを切って以来増えているが、人口に占める割合は3%。人手不足が深刻な農業や製造業や建設業、介護の現場は外国人なしに立ちゆかず、海外の優秀な研究者の誘致は日本の大学にとって最重要課題の一つだ。
しかし、平成のバブル期に日系人が建設現場や工場を支えてきたころから、日本語や社会習慣の習得は基本、民間や自治体任せだ。
女性、高齢者…矛先は次の「少数者」に
言葉の壁から地域社会になじめず、子どもが勉強についていけないことも多い。外国人の差別を禁じ、権利を明記した人権基本法すら整備されていない。
記事の後半で、この社説ができるまでの議論の過程などをお届けします。
日本人の利用を前提としてきた制度がほころぶのは、当然だ。外国運転免許の切り替え制度見直しなどでは、公正な仕組みや法令の整備が急がれる。地域社会では、習慣の違いや意思疎通の難しさから摩擦が生じても、議論を避けることなく、互いに納得できるルールづくりが大切だ。
問題の根底には、長年の政府の姿勢がある。外国人を人手不足を補う都合のよい「労働力」とみなし、「人間」として向き合うことを避け続けてきた。ともに働き、暮らす人たちを、同じ社会の一員として受け入れていく態勢づくりこそが、政治家の仕事ではないか。
実質的に上がらない賃金や物価高への怒り。少子高齢化の進む将来への不安。やり場のない不満のはけ口は、自分より弱い集団へと向かう。そこに目を付けて用意された不満の「受け皿」が、支持を広げる。1929年の大恐慌への不満がナチスを生み、日本の軍事行動に拍車をかけた。
米トランプ政権や欧州の右派政権の誕生の経緯を見ても、明らかだ。選挙で支持を得やすい言説は冷静な議論を奪い、民主主義の基盤である「法の下の平等」をたやすく揺るがす。
私たちは何を得て、何を失うのか。
「自分は日本人だから」と外国人への差別を容認すれば、矛先は次のマイノリティーに向かいかねない。たとえば「日本人優先」を掲げる政党は「男女共同参画が間違っていた」と少子化の原因を働く女性たちに求め、医療費を減らすためには終末期の延命措置の医療費を自己負担すべきだとも主張する。
差別を容認する社会では、いつ自分が差別される側になるかもしれない。その認識を持ち、どのような社会をつくるのか、考えたい。この夏、私たちは岐路に立っている。
この社説ができるまで 論説主幹・佐藤武嗣
政治不信や経済的不安、治安への懸念などを背景に、憤りや恐怖に訴えて有権者の耳目を集めるポピュリズムは、民主主義国家の米国や欧州で顕在化し、政治・社会の分断が深刻化しています。
今回の参院選の各党の訴えを…
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※全文はソースで。
引用元: ・参院選 「優先」の先にある 自分が「差別される側」になる未来 [少考さん★]
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