引用元: ・フィギュアの魔改造は懲役5年罰金500万。車の違法改造は懲役半年罰金30万。魔改造で死ぬ奴はいない [866556825]
(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
■ あまりに軽い刑、控訴を求めるも検察からは「控訴できない」と
「4月24日、札幌地裁で2人の被告に対する刑事裁判の判決が同時に言い渡されました。運転者は懲役3年執行猶予5年、所有者は罰金20万円でした。
娘は殺されたも同然です。なのに、彼らは今までと変わらぬ生活を続けられる……、執行猶予と罰金というあまりに軽い刑に納得できず、検察にはなんとか控訴してほしいとお願いしましたが、ゴールデンウィーク明けの5月7日、控訴はできないという連絡があり、翌日、判決が確定しました。本当に悔しいです」
連絡をくださったのは、一昨年、札幌市内の歩道で、不正改造車から脱落したタイヤの直撃を受け重度の後遺障害を負った女児(5)の父親です。
本件については、判決直前の4月18日、以下でレポートしました。
改造車の脱落タイヤ直撃で愛娘は今も意識不明、判決待つ父親の苦悩「加害者は無保険、口先では賠償すると言うが…」(2025.4.18)
2023年11月、ガードレールのついた歩道を2人の幼い娘と歩いているとき、突然襲ってきた黒い塊。その一瞬を境に、次女は未来を奪われ、家族も大きな悲しみと苦しみを背負うことになったのです。
上記記事でも記した通り、本件には2人の被告がいます。一人は、不正と知りながら自車(ジムニー)の改造を繰り返し、「道路運送車両法違反」で起訴された所有者・田中正満被告(51)。もう一人は、田中被告からこの車の改造を依頼され、試運転中に今回の脱輪事故を起こして「自動車運転処罰法違反」で起訴されていた若本豊嗣被告(51)です。
判決確定から1カ月、父親は悔しい胸の内をこう語りました。
「渡邉史朗裁判長は、『幼く、未来ある被害者が受けた障害は非常に重大で、意思疎通できない理不尽な状況にある』と述べ、被告らに対しては、『不正改造の中でも、事故の危険性を高める部類の改造であり、相応に悪質である』と厳しく指摘しました。しかし、いくら悪質であっても、結局この程度で済むんですね。被害の大きさと刑罰のバランスがまったく取れておらず、私自身、この結果をいまだに受け入れることができません」
【事故の事実】
両被告は2023年10月28日、共謀して軽RV(ジムニー)のタイヤを不正に改造。前輪に異常を感じた所有者の田中被告は、若本被告に点検を依頼した。若本被告は同年11月14日、ナットの緩みに気付かないまま運転し、脱落した左前輪を女児に衝突させた。
【所有者/田中被告】
●車両の所有者であり、改造を主導したということで、負うべき責任が大きい。
●ホイールナットの緩みを助長させた責任は、一時的には所有者の田中にあり、田中が点検するべきものであった。そのため、若本(運転者)ばかりを大きく責めることは難しい。
●両者の供述内容をふまえると、田中はその内容が小出しに変遷しており、若本の具体的かつ合理的なそれと比べて信用性に欠ける。
●しかし、田中には前科もなく規範意識の甘さを悔いている。
【運転者/若本被告】
●若本本人が行った作業として認定できるもののうち、タイヤ突出の中核を担ったとは言い難い。しかし、不具合の可能性に思い至り、運転を控えることや点検義務を果たすことは容易だったはず。
●走行にあたっては高い注意義務を負っていたといえ、それを怠り、漫然と運転した過失は悪質。
●若本は整備業経験者であったが、本件車両の点検は業務として応じていたのではないため、特別に高度な注意義務があったというのは相当ではない。
●若本は交通事犯の前科4犯を有するが、自己の過ちを認め、今後は運転をしないと誓うなど反省が見られる。
●以上から、若本の過失を重大とまで評価するのはいささか躊躇を覚える。
判決文に目を通した父親は、驚きを隠せない様子で語ります。
「まず、若本被告が交通だけで前科4犯だったということに目を疑いました。過去にも人身事故を起こし、また無免許運転でも検挙されていたようです。こうした履歴がありながら、他人名義、しかも任意保険未加入の不正改造車を平気で運転できるものでしょうか」
JR北海道苗穂工場と
JR西日本広島支社
■ 娘の治療費・入院費、所有者から支払われたのはわずか20万円
事故を起こしたジムニーは任意保険に未加入だったため、いまも損害賠償のめどは立っていません。
被害者参加制度を利用した父親は、法廷で若本被告に直接質問しました。
「通常ではとても支払いきれる金額ではないが、被害者家族に泣き寝入りを強いるのか」
すると、若本被告は、
「泣き寝入りさせません」
と即答。さらに父親が、
「被告の言葉というのは信用するのが難しく、非常に不安が大きい。田中被告と相談するなり、計画的に支払っていくという意思を見せて欲しいが、できるか?」
そうたずねると、
「はい、できます」
と答えました。しかし、実際には、両者による支払いに関しての計画はおろか、賠償の分担等の相談すらしていないことが明らかになっています。
「その事実を知ったときは、大きな怒りと呆れが混ざったような感情が湧きました。被害者の治療費や入院費は本来、加害者が支払うべきものですが、相手側に支払い能力がないため、私たちの保険などを使って立て替え払いを続けてきました。
でも、さすがにこちらも生活が苦しくなったため、弁護士を通して3カ月おきに、立て替え費用の返還を求めることにしたのです。2人で等分したら1カ月7~8万円です。しかし、それもすぐに支払われたわけではなく、若本被告から返還されたのは公判直前。田中被告からは、『事業がうまくいっていないため生活が苦しく、支払えない』という理由で、これまでに20万円のみが返還されたにすぎません」
報道でも、著作権をもつアニメ制作会社の許可を得ずにフィギュアを切り離しつなぎ合わせるという改造=改変行為をしているとされています。
ですから、その「著作者人格権」を侵害する「魔改造」をしたフィギュアを、「魔改造」されたものであると知りながら販売した行為は、著作権法第113条第1項第2号に違反する著作権法違反となると考えられるのです。
著作者人格権を侵害した場合、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています(著作権法第119条第2項第1号)。
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