日本各地の自治体で、「下水道料金」が何十年にもわたって改定されずにきた。この事実は、単なる行政手続きの遅れであろうか。そこには、制度的疲労、政治的忖度、社会的無関心が複雑に絡み合った結果ともいえないだろうか。
生活インフラの根幹を支える公共料金の見直しが、いかに困難であるか。老朽インフラの更新期に差しかかるなか、料金を据え置き続けた“ツケ”が、今まさに社会全体のリスクとして表面化しつつある。
国土交通省が平成29年度に実施した全国調査によれば、公共下水道を運営する1,189団体のうち、料金を11年以上改定していない自治体が47.1%であると報告されている。
うち10.7%は、21年以上にも渡って見直しがなされてこなかった。料金改定が制度上3~5年ごとの定期見直しを原則としている。にもかかわらず、全国的にその原則が形骸化している。
加えて、維持管理費および資本費のすべてを使用料対象経費に算入できている自治体の割合は、わずか7%にとどまっている。
一方で、資本費(減価償却費や企業債の元利償還費等)をまったく算入していない団体は、6割を超えているという調査結果もでている。
これは、更新投資や財務的健全性を将来世代に先送りしているとも言えないだろうか。
本来、下水道使用料は、「維持管理費」と「資本費」を含む全体の経費に基づいて算定すべきとされている。
にもかかわらず、制度の本旨である「フルコスト回収型(維持費や借入金返済、設備更新など、事業に必要な全費用を料金収入でまかなう考え方)」の原則が、多くの現場で守られていない。
国土交通省が示す『下水道使用料の算定』では、経費に基づく料金設定を原則としている。
適正なコスト配分、需要予測、経費の分類(固定費・変動費・需要家費)、基本料金と従量料金の二部料金制など、制度的な設計が詳細に定められている。
こうした制度設計が存在するにもかかわらず、現実には「料金改定がなされたとしても、その中身が制度の趣旨を満たしていない」という事例が少なくない。
言い換えるのであれば、単に料金を引き上げたという事実だけでは評価できず、本当に事業費を回収するに足る水準に達しているか、長期的に持続可能な制度設計となっているのか。このことが、問われるべきであろう。
確かに、近年、ようやく一部の自治体では料金の引き上げが実施されつつある。だが、問題は単に「値上げしたか否か」ではない。
実際には、料金を引き上げたにもかかわらず、依然として、資本費の一部しか反映できていないケースも少なくない。
つまり、改定そのものが「形式的」あるいは「限定的」にとどまり、制度的な持続可能性の回復には不十分な水準にとどまっているという現実がある。
このような料金据え置きの長期化や中途半端な改定は、単に行政手続きの遅延ではなく、老朽化した施設の更新遅れ、財源確保の困難化、さらには将来世代への過度な負担という形で社会的リスクを内包している。
。下水道という生活に不可欠な基幹インフラに対する「料金改定の空白期間」は、社会が背負う“見えない負債”の象徴である。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1ba7f964589cee2cd6c5850c1c47212dbfec3aec
引用元: ・【足立泰美・甲南大学教授】値上げ忌避のツケ 「50年間据え置かれた下水道料金、その静かなツケが、いま日本各地で膨らみ続けている」
自民党が日本を30年給料が上がらない国にした結果、国民は米が食えなくなり、水も飲めなくなりつつあるということだ
値上げなら賃金も上げていけばよい
水道基本料徴収放棄についても厳しく指摘しないとな
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