■ 世界の動向
比較できるデータが揃う2023年で見ると、合計特殊出生率は、日本が1.20であったのに対して、中国が1.00、台湾が0.87、韓国が0.72であり、いずれも日本より低い。東アジア全体で1.01である。
一方、アメリカは1.62、ロシアが1.40、イギリスが1.20、フランスが1.68、ドイツが1.35、イタリアが1.20、カナダが1.20である。
アメリカの数字が高いのは、移民の流入によるところが大きい。トランプ政権が移民制限の方向に進めば、この数字も低下する可能性がある。G7の中で、フランスやドイツが高いのが目立つ。それは、積極的に少子化対策を講じてきたからである。
フランスでは、合計特殊出生率は、1993年には1.66まで低下したが、2006年には2.03に達し、2014年まで2.00以上を維持した。それは、保育支援、家族給付などの政策が功を奏したからである。また、結婚しないカップルや単身女性の出産も増えた。
しかし、それ以降は低下傾向にある。その背景には、女性の高学歴化と社会進出があり、経済的にも育児と仕事の両立が難しくなっていることがある。
ドイツでは、合計特殊出生率は、2011年の1.39から上昇し、2016年には1.59まで上がった。それは、2005年に3歳未満児への保育を拡大したり、2007年に「両親手当」を導入したりしたことが実を結んだのである。しかし、近年は、新型コロナウイルスの流行やウクライナ戦争の勃発、物価高、気候変動などの影響で、低下気味である。
フランスとドイツの例を見ると、政策で出生率を上げることができること、そして、パンデミックや戦争や生活苦が出生率を下げることが理解できる。
■ 少子化の原因
少子化の理由は国によって異なるが、上記のフランスやドイツを含め、多くの国で、以下のような点が指摘されている。
女性の高学歴化、社会進出に伴い、結婚や出産を望まない女性が増えている。また、晩婚化が進み、それも出産数の減少につながっている。
さらに経済情勢の悪化によって、生活費が高騰していることも大きな要因である。
また、教育費の負担は、子育ての障害になっている。
さらには、高齢化に伴い認知症などを発症する親が増え、その介護も子育てとの両立を難しくしている。
以上のような問題に取り組む必要があるが、人々の価値観を変えるのは容易ではない。
■ 中国の苦悩
昨年の3月に北京の社会科学院に招かれて、教官や大学院生を前にして、少子高齢化問題について講義をした。この研究組織は、中国政府のシンクタンクであり、政府も国民も、最近になってこの問題に対する関心を高めている。
先述したように、中国の少子化は、日本よりも深刻である。この少子化傾向が続けば、国力を大きく殺ぐことになる。アメリカと比較したときに、この点が中国のアキレス腱である。
強力な軍隊を持っても、兵士の数が不足するようでは戦力にならない。人口が減少したのでは、世界の大国として影響力を行使できなくなるが、人口世界一の座はインドに奪われてしまった。
日本では介護保険など介護システムが充実しているが、中国はこの分野で遅れており、少子高齢化社会で親の介護が若い世代の大きな負担となっている。
中国では、国内問題として、今や人口減少への対応が大きな争点となっている。
中国共産党は、2021年5月31日の政治局会議で、1組の夫婦に3人目の出産を認めることにした。
1979年以降、中国は人口抑制策として「一人っ子政策」を実施してきたが、少子高齢化が進み、一人の子どもが両親と祖父母の老後の面倒を見るという過酷な状況が生まれた。
そこで、中国政府は、「一人っ子政策」を緩和し、2016年に「二人っ子政策」に政策転換したが、その後も、少子高齢化に歯止めがかかっていない。合計特殊出生率は、2019年は日本が1.36、中国が1.30、2020年は日本が1.34、中国が1.28である。
そこで、「三人っ子政策」に変更したのである。そして、2022年には、合計特殊出生率は、日本が1.26、中国が1.18となり、日本と共に中国の少子化が進展している。
以下全文はソース先で
JBpress 2025.6.7(土) 舛添 要一
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88764
引用元: ・【舛添要一氏】出生数70万人割れ、歯止め利かない日本の少子化 だが中国・台湾・韓国はさらに…なぜ東アジアで少子化が進むのか [6/8] [ばーど★]
別に問題じゃない
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