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(左から)令和ロマン・高比良くるま、吉田麻也
芸人から野球選手へ波及するなど、オンラインカジノ問題は収まる気配がない。過去の利用を認めた著名人は一様に「違法性の認識がなかった」とコメントしているが、確かに2~3年前まで「オンラインカジノはグレー」という間違った認識が社会に蔓延していた。その責任を、オンラインカジノ業者が運営する「無料版アプリ」のCMを流していたテレビ局に問う声は大きい。いったいどの局がいつ頃流していたのか、そして責任についてどう考えているのか。民放5社に聞いた。
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「有料版」へ誘導するために作られた「無料版」
まずオンラインカジノの無料版について説明しておく。無料版であっても中身は違法な有料版同様、ブラックジャックやバカラ、スロットゲームなどのカジノゲームが取り揃えてある。利用者は無料で購入できるアプリ内のコインを賭けて遊ぶので、無料版自体には違法性はない。
ここで考えなければならないのは、なぜオンラインカジノ業者が高い広告料を払ってまで、無料版アプリを宣伝していたかである。
「当然、有料版へと誘導するためです。巣篭もり需要が増えたコロナ禍のあたりからテレビ局やネットメディア、スポーツ紙などへの広告売り込みが激しくなりました。実際、その頃から国内のオンラインカジノ利用者が急増していったのです」(広告代理店関係者)
「デイリー新潮」はアンケート方式の質問状を日本テレビ、TBS、テレビ朝日、フジテレビ、テレビ東京の5社に送った。質問は下記の3点である。
(1)これまでオンラインカジノを運営している企業のCMを「無料版」を含めて取り扱ったことはあるか?
(2)あるならば、いつからいつまでの期間、どの業者のCMを放送していたか?
(3)当時、無料版とはいえ違法な有料版へ誘導されることへの問題性を認識していなかったのか?
テレビ東京は「遺憾に思います」と反省の意
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吉田麻也が出演したオンラインカジノの広告(YouTubeより
過去の取り扱いを認めた社のうち、はっきりと反省の意を示したのがテレビ東京だった。
〈過去にBSテレビ東京で無料版のオンラインゲームのCMを放送したことはあります。違法な「オンラインカジノのCM」を放送したことはありません。BSテレビ東京で、2020年頃から2023年にかけて「ベラジョン」を、2020年頃から2021年にかけて「ミスティーノ」のCMを放送しました。現在は扱っていません〉(経営企画局 広報・IR部)
当時の認識については、
〈違法なオンラインカジノそのもののCMではなく、あくまでも無料オンラインゲームのCMについて、BSテレビ東京で放送しました。ただ、そのゲームサイトを利用したことから、違法なオンラインカジノの存在を知り、検索などをしてそのサイトを使ってしまった方がいる可能性を否定することはできず、大変遺憾に思っております。今後は、CMの考査についてより厳しく運用してまいります〉(同)
引用元: ・民放5社にオンラインカジノCMを流した「責任」を聞いた [582792952]
テレビ朝日も〈無料オンラインゲームとして、「ベラジョン無料版」のCMを取り扱ったことがございます〉と回答した。扱った時期は〈2022年9月頃から2023年4月まで〉。
当時の認識については、
〈当時、民放連放送基準を基に作成した当社CM放送基準に基づき、無料版であること、有料版への誘引がないこと、射倖心を煽らないようになっていること、放送する番組を限定すること等を確認した上で、当該CMを受理いたしました。現在は総合的な判断の上で当該CMの受け入れを見合わせており、今後は考査基準をより一層、厳格化して運用してまいります〉(広報部)
ワイドショーでオンラインカジノ問題を取り上げながらもCMを流していたテレ朝
だが、この回答についてテレビ朝日元法務部長で弁護士の西脇亨輔氏はこう疑問を呈す。
「CMの内容についてはきちんと審査したと答えていますが、CMを出す会社の『業態審査』をきちんとしていたかはっきりしません。公共の電波を使って企業広告を流す以上、その企業が犯罪や反社会的勢力と関係ないかなどの『身体検査』に当たる審査も必須。表面上は無料ゲームのCMでも、ネットカジノの会社が流すなら本当の目的は我が国では違法なギャンブルへの誘引にあると見抜いてCMを弾くべきだったのに、そうした十分な審査ができていなかったのではないでしょうか」
またテレ東とテレ朝が回答した放送時期について、前出の広告代理店関係者はこう指摘する。
「テレ東は2020年頃から2023年にかけて、テレ朝は2022年9月から2023年4月までとしていますが、オンラインカジノが社会で大きな問題として取り扱われるようになったのは2022年春、山口県阿武町で誤送金騒動が起きてからです。あの時、町が間違えて送金してしまった給付金4630万円を一人の若者が2週間足らずでほぼ全額オンラインカジノで消費してしまい、社会は大騒ぎになった。特にテレ朝は誤送金事件をワイドショーで連日大きく扱い、オンラインカジノの怖さについても取り上げていた。その後、オンラインカジノ側の片棒を担ぐようなCMを流していたわけですから脇が甘いと言わざるを得ません」
とはいえ、ちゃんと回答してきただけ両社は誠実な方である。TBSから届いた回答はたった「3行」だった。
〈地上波ではオンラインカジノ運営企業のCMを放送したことはありません。ネット広告では取り扱ったことがあります〉(経営サポート局広報室)
注目すべきは〈地上波では〉と断りながら、BSについて一切言及がないところだ。
意外にもフジは「取り扱いなし」
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岡崎慎司が出演したオンラインカジノの広告(他の写真を見る)
実際には、2月26日に行われた社長定例会見で伊佐野英樹社長はBS-TBSで2021年から2023年まで放送していたと認めた上でこう語っている。
「放送したCMは無料版のゲームのCMで、もちろん違法な有料のオンラインカジノのCMは放送しておりません。放送した無料版のCMには有料版と異なるとか、二十歳以上推奨とか注意喚起が表示されるようにして、有料版に直接誘導するものではなかったというふうに認識しています」(スポニチアネックスの報道より引用)
TBSは地上波で取り扱っていなければ“セーフ”とでも言いたかったのだろうか。
上記3社がオンラインカジノ業者のCM取り扱いを認める一方、フジテレビは〈弊社ではオンラインカジノを運営する企業のCMを扱ったことはございません〉(企業広報部)と回答した。現在、フジは中居正広の女性トラブル対応で社内コンプライアンスの脆弱性が指摘されているが、CM考査についてはしっかりしていたようである。
日本テレビからは回答はなかった。
広告塔だった「吉田麻也」の所属事務所から届いた回答
「ベラジョン無料版」に広告塔として出演していた元サッカー日本代表・吉田麻也にも見解を聞こうと、所属事務所「ユニバーサル ミュージック合同会社」に質問状を送ったところ、下記の回答が届いた。
〈ベラジョン無料版のCM出演については、出演時点では現金授受が発生しない無料オンラインゲームであると認識し、当社で出演依頼を受諾しました。その後、2023年の6月で契約を終了しております。CM出演の契約は、この無料版のサービスに限定されており、刑法の賭博罪には該当しないと考えております。
しかしながら、違法カジノのPRに繋がるというご指摘および昨今の情勢を鑑み、当時の認識が不十分であったことは否定できません。この点に関して、吉田麻也はじめ関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます〉
前出の広告代理店関係者はこう訴える。
「連日、各局の報道・情報番組でオンラインカジノ問題を取り上げていますが、過去に無料版CMを取り扱ったことのある民放はまず自分たちの足元から見直すべきではないでしょうか。テレビの影響力は大きい。無料版CMの放送に違法性がなかったとしても、社会に間違った認識を広めて犯罪を誘発してしまった可能性は否定できません。責任を持ってもっとしっかりとした検証をするべきです」
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