ティム・フェールバウム(映画監督)――クローズアップ
佐藤 久理子 6時間前
1972年9月5日、ミュンヘン・オリンピック中に起きた「黒い九月事件」。選手村に侵入したパレスチナ武装組織がイスラエル選手団の9人を人質に取り、
最終的に17人の死者を出したテロ事件だが、その一部始終がテレビで生中継された前代未聞の出来事でもあった。それを報道する側――中継を担当したテレビクルーの視点から描き、
臨場感溢れる95分の作品にまとめたのが、本作『セプテンバー5』である。監督・脚本を手がけたのは、ディストピアを描いた『HELL』(11)などで知られるティム・フェールバウムさんだ。
「当時の報道スタッフの一人だったジェフリー・S・メイソン氏から話を聞くことができたのが着想のきっかけでした。
彼が話してくれた全顛末をテレビのコントロールルームをメインに“モニターを通して”描いてみたら面白いのでは、と思いついたのです」
作中でメイソン氏の役を演じるのはジョン・マガロ。『ニュースの天才』(03)などで知られるピーター・サースガードがミュンヘンにおけるABCスポーツ班の責任者だったルーン・アーレッジを演じる。
そう、注目すべきは、この中継を担当したクルーたちが、政治ニュースなどの扱いには不慣れなスポーツ番組チームだったことなのだ。
予想だにしなかった状況に遭遇した彼らは、事態が変わるたび、何度も重要な決断を迫られる。
「当時の報道テープを入手したことで、時系列に沿った物語の再構築が可能になりました。さらにセット内の機材も実際に使われていたものを用意。
モニターには作り物の映像と本物の映像をまぜて流してリアル感を追求しました。つまり僕たちはまるでドキュメンタリーを撮っているかのように、モニターを見つめるクルーたちを撮ったわけです。これは、『悲惨なテロが中継されているのと同時刻、
別のモニターには平和な競技の様子が映っていて、すごくシュールだった』というメイソン氏の話が印象的だったからです。また彼は、『ひとたび報道が始まったら考えている暇はない、続けるしかないのだ』とも語っていました」
ひたすら現場を映し続けたために警察側の行動が犯人側に筒抜けになり、人質救出作戦が中止される事態も起きる。
「もし彼らがニュース担当であったならばスタート地点は異なっていたでしょう。しかし本作は、彼らの行動を断罪するものではありません。
描きたかったのは、報道クルーたちのジレンマです。メディアがトピックを追いかけるのは普遍的な姿勢で、現代はソーシャルメディアによってさらに激化しています。だからこそ、報道する側の伝え方、倫理観が問題になる。
明確な答えはわかりませんが、本作を通して、それを観客に問いかけ、改めて考えることは、意義のあることだと思うのです」
引用元: ・【特集】17人の死者を出したテロ事件を生中継し「警察側の行動が犯人側に筒抜けに…」報道クルーの倫理観を問う
あれとか、マスコミのカメラがなきゃこれだけの人数用意しなくていいのになって思うぞ。
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