「一帯一路」は実は外交的野心ではなく、中国国内の「供給サイドの改革」とほぼ同時期に打ち出された経済政策だった。ではなぜ、長く続かなかったのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/99f68d0ee8239e1b41d2a5cd679a612a94521e93
引用元: ・ピークアウトする中国経済…「借金取り」に転じた「一帯一路」の真実 [662593167]
中国の一帯一路政策は有名だ。アジアとヨーロッパを陸路と海上航路でつなぐルートを作り、貿易を活発化させて経済成長を目指すという構想だが、国際的地位と軍事的プレゼンスの向上という中国の野心のあらわれとして解釈されることも多い。だが実際には、当初から生産能力過剰を抱える中国国内の経済対策という側面が強かった。
中国は強大すぎるインフラ建設能力を持つ。空港や港、高速道路、そして不動産と中国国内に作りまくってきた。それが必要だった間はいいのだが、もう十分だ、これ以上作っても無駄になるだけとなると困ったことになる。
海外への輸出は一つの解決策だが、急拡大させれば貿易摩擦につながる。そこで貿易摩擦を生み出さない海外での需要創出策として考案されたのが、「一帯一路」に代表される積極的な対外援助であった。
■途上国を使った過剰生産の解消手段
中国政府は、経済が「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる安定的な成長段階に入ったと主張するようになった。その対応として、市場メカニズムを重視した改革の継続、投資に過度に依存した成長路線からの転換、いわゆる「供給サイドの改革」がさかんに説かれるようになった。
中国国内では消費しきれない過剰な生産物は海外に輸出する必要がある。だが、先進国に輸出すると貿易摩擦が起きる。新興国、途上国向けならば問題はないが、彼らには金がない。そこで中国が融資して、その資金で中国のインフラ建設プロジェクトを行うという方策が編み出された。これが「一帯一路」だ。「供給サイドの改革」と「一帯一路」がほぼ同時期に打ち出されたのは偶然ではない。
中国は生産力が過剰なだけではなく、資金も余っていた。中国国民は消費に消極的で貯蓄率が高い。この貯蓄が中国国内の投資に向かえば、さらに生産力が高まり、いびつな経済バランスは解消されない。投資依存の成長路線から脱却するためには、このマネーを国内ではなく、海外への投資に振り向ける必要があった。
興味深い実証研究がある。ハイデルベルグ大学教授のアクセル・ドレハーらの研究グループは、2000年から2014年にかけての中国の途上国支援をデータベースとし、どのような要因が援助額に影響を与えているかを分析している。その結果、鉄鋼やアルミ、セメントなどといった生産財の過剰生産、そして外貨準備額の増加が、対外資金援助額の増加と相関していることが明らかとなった。
すなわち、外交的野心ではなく、過剰な国内資本や外貨準備を海外に「逃がし」、生産能力の過剰を緩和することが一帯一路に代表される対外資金援助の狙いであると裏付けられたのだ。
しかし、対外資金援助攻勢を通じて新興国の成長を促す、という意味での一帯一路構想は、長くは続かなかった。
■大判ぶるまいから借金取りへ
上図は中国から新興国への「純資金フロー」の推移を示している。活発に行われていた援助は2016年をピークに減少し、2019年以降はむしろマイナス基調に転じている。つまり、新たに融資する額よりも償還する額が上回ったことを意味している。
金を貸すフェイズから回収するフェイズに入ったわけだ。中国国内のありあまる資金をなりふり構わず新興国・途上国に振り向けるという一帯一路のイメージは、かなり早い段階で実態とかけ離れていた。
なぜ、中国は「内向き」に転じたのだろうか。3つの要因が挙げられる。
(1)元高から元安へ
一帯一路が提起された2010年代前半は人民元高基調だった為替レートが、現在では元安に振れているためだ。一時は1ドル=6元を割り込む寸前まで元高が進んだが、現在(2024年12月)は7元強にまでレートは戻った。
人民元は長期的に元高に進んでいくという期待から、世界の資金が中国に流れ込み、投資マネーの過剰が生まれていたのだが、この状況はもう終わっている。むしろ米ドルの上昇期待が高まっている状況だ。対外経済援助は通常、ドル建てで行われる。ドル高に振れれば、中国のコストも、被援助国の返済ハードルも上がってしまう。
(2)債務不履行リスク
発展途上国の債務不履行リスクだ。世界銀行エコノミストのセバスチャン・ホーンらによると、中国の対外融資のうち、債務危機にある高リスク国への比率は、2010年の約5%から約10年間で60%にまで増加したという。
国家開発銀行や輸出入銀行などの中国政府系金融機関が主に融資を担当しているが、十分な調査が行われてこなかったため、返済が滞るリスクが高い。返せる見込みのない、リスクある相手にも中国は大胆に金を貸す。
返済できないほどの融資を行って、相手国をいいなりにする「債務の罠」だなどと言われることが多いが、むしろ、調査がずさんだったために、リスクある相手に融資してしまったというのが現実に近い。
アメリカは世界一の債務国
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