代替映像であるACジャパンのCMが流れているうちは、フジには既定通りの収入があるが、それはやがて切れる。
さらに問題は4月以降のスポンサー、新番組のスポンサーにまでおよんでいる。現在、4月以降のCMセールスが行われている真っ最中だが、前出・広告代理店によると、フジのCMは売れ行きがかなり鈍い。
このままだとフジは制作費不足に陥る可能性が高い。視聴率4位のフジはもともと制作費が他局に比べてかなり少ない。
昨年度の各局の制作費は日テレが約893億円、テレ朝が約791億円、TBSが約937億円、フジが約682億円だった。
前出の芸能プロ幹部は早くも「フジはギャラを値切るようになる」と読む。
「そうなったら、ウチは他局や動画の仕事を選ぶ。フジは避ける。同業他社もそうするだろう」(前出の芸能プロ幹部)
フジは未曾有の危機に襲われそう。なぜ、ここまでの事態に発展したのか。背景にはNHKも含めたテレビ界全体に横たわる隠蔽体質がある。
中居の件は、フジは被害者女性に配慮しつつ、早い時期に概要を公表すべきだった。今回の会見程度の薄い内容なら可能だったはず。
加害者の中居による「だれかtoなかい」も打ち切らなくてはならなかった。それが一般的な企業の考え方に違いない。
隠蔽体質があるテレビ界の不祥事は大半が外部の報道で発覚する。今回の問題は昨年12月19日発売号『女性セブン』の一報で露見したが、これまでも自分たちから不祥事を公表したことはほとんどない。
「椿発言問題」は産経新聞、「TBSオウムビデオ問題」は日テレのそれぞれスクープだった。
「視聴率買収問題」は日テレが自ら発表したが、2004年のNHK「『紅白』プロデューサーが制作費8000万円を横領」は「週刊文春」の報道で発覚した。
なぜ、テレビ界は隠蔽体質なのか。報道機関だから、不祥事が恥ずかしいのかもしれないが、それより大きいのは選民思想があるからではないか。
自分たちを「高学歴で高給取りの特別な存在」だと思っているから、世間から非難されるのが嫌なのだと見る。
テレビ界は隠蔽のみならず、情報操作もする。都合のいいことばかり書いてくれるライターをつくろうとする。
筆者も「社内報の執筆か(社内)講演会をやりませんか」と持ち掛けられたことがある。目的は筆者に利益を提供すること。だが、利益相反だから厳禁だ。
ほかにも利益供与の方法はある。1990年代まで金融界が総会屋に接していた際の仕組みと似ている。報道機関がやることではない。
港社長が1月17日に行った会見には放送記者クラブの人間しか入れず、不満の声が上がり、他局の人間まで抗議の声を上げた。しかし、これは筋違いだ。
他局の社長らによる会見も放送記者クラブの人間以外はシャットアウトしているからである。
雑誌記者、夕刊紙記者、フリー記者らはどの局の会見にも入れない。他局の記者はフジに抗議する前に自局の姿勢をあらためるよう努めるべきではないか。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
引用元: ・【芸能事務所が一斉に逃げ出す地獄絵図】CM激減で 「フジテレビはギャラを値切るようになる」
もちろん税金投入します
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