コロナ後遺症に関する厚生労働省の診療の手引きの編集委員会メンバーでもある岐阜大学教授(脳神経内科)の下畑享良さんに話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
新型コロナウイルス感染症について、厚生労働省が「いまだ不明な点が多いですが、一部の方で長引く症状があることがわかってきました」として警戒を呼びかけるのが、「罹患(りかん)後症状」いわゆる後遺症です。
「ロング・コビット」と総称され、WHOは「新型コロナウイルス感染の可能性が高い、または確定した既往歴のある人が、発症から通常3カ月後に、少なくとも2カ月間持続する症状を持ち、他の診断では説明できない場合に生じる」と定義しています。
岐阜大学教授(脳神経内科)の下畑享良さんは、複数の研究結果から、ロング・コビットの特徴を「20代にピークがあり、働き盛りにかけて多く、女性に多い」と説明します。
10カ国で100万件以上の医療記録データなどを基に進行中の研究によれば、ロング・コビットは主に「呼吸障害(60.4%)」 「疲労(51.0%)」、さらに記憶力や注意力が衰える「認知障害(35.4%)」に分類されるということです。
また、ロング・コビットを発症しやすく、回復しにくい要因には「(新型コロナ以外の)過去の病気の既往歴」や「新型コロナ感染の急性期が重症だったこと」、「新型コロナワクチン未接種や接種不十分であったこと」などに加え「再感染」があり、「再感染の度に発症リスクが増加する」と説明します。
ロング・コビットの症状のうち、近年注目されているのが、「認知障害」です。下畑さんは「現在までに、新型コロナウイルスの感染後に『認知機能障害やアルツハイマー病のリスクが上がる』という報告が、海外で相次いでいる」と指摘します。
このうち、米医学誌のNature Medicineに2022年9月に掲載された、コロナ感染した約15万人を含むアメリカの退役軍人のデータを基にした大規模研究では、感染後のアルツハイマー病のリスクが高まっていたことがわかり、注目されました。
感染した人が1年後にアルツハイマー病になるリスクは、感染していない人の2.03倍で、記憶障害は1.77倍だったということです。
また、信頼性の高い複数の研究から、こうしたリスクは長期間にわたり継続することも示唆されています。
「『感染群の認知機能は非感染群より3年間のすべて時点で低下する』ことを示す研究や、『入院を要した患者の認知機能低下は20年分に相当し、急性期から1年後も脳損傷が持続している』ことを示す研究もあります。アルツハイマーのような認知症を来しやすい患者は高齢者ですが、ロング・コビットの認知機能障害は小児期と青年期でも認められ、特に小児で記憶力や集中力の障害が多いことを示す研究もあります」
こうした研究を背景に、下畑さんは「新型コロナは脳にも影響を与えると知ってほしい」と注意喚起します。
なぜ新型コロナは脳にも影響を与えるのでしょうか。下畑さんは「明確にはわかっていない」とした上で、可能性があるものとして、いくつかのメカニズムを挙げます。
まずは、脳への新型コロナウイルスの直接感染と、特徴的なスパイク蛋白による神経への障害です。新型コロナウイルスは嗅覚神経や頭蓋骨の骨髄など少なくとも4つのルートで脳に直接感染し、このとき、ウイルスの成分の「スパイク蛋白」により神経細胞にダメージが生じます。
そして、軽症でも、肺などの呼吸器への感染により起きる炎症反応によって放出されるサイトカインという物質が、脳の細胞にも影響してしまい、脳神経同士のつながりや神経伝達を阻んだり、新しく神経ができるのを妨げたりしてしまいます。
他にも、ウイルスが脳細胞を融合させ、正常に機能しない巨大細胞にして元に戻れなくさせたり、認知に関わる重要な神経細胞に感染して、その細胞を死なせたりするなどのメカニズムが今のところ考えられている、ということでした。

引用元: ・【脳に直接感染、20年分の認知機能低下】記憶力や注意力が衰えるコロナ感染後遺症・・・発症しやすいのは 「コロナワクチン未接種」 「再感染」・・・再感染の度に発症リスクが増加する
感染してボケまくれ
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