2024.11.04 23:40文=稲垣貴俊、写真=クリント・イーストウッド(REX/アフロ)
『硫黄島からの手紙』(2006年)や『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)などの名作を手がけてきた、巨匠監督にして名優クリント・イーストウッドの監督最新作『Juror No.2(原題)』が北米でひっそりと劇場公開された。
配給は長年のパートナー関係にあるワーナー・ブラザース。1930年生まれのイーストウッドは今年94歳、本作が最後の監督作品になるかもしれない……にもかかわらず、北米での上映館数はわずか35館、しかも公開規模を拡大する計画もないという。
小規模のインディーズ映画ならともかく、ワーナーほどの大手スタジオでは異例の事態だ。プロモーションも最小限にとどまり、興行収入に関する情報も公式発表されていない。
記念すべき40本目の監督作である『Juror No.2』は、ある男の倫理的葛藤を描いた法廷スリラーだ。アルコール依存症から回復中のジャーナリストが、ある殺人事件の陪審員に選ばれるが、彼には大きな懸念があった。事件当日、現場の付近を運転中に、何かが車にぶつかったのだ。
このまま何も言わなければ、無実の男に有罪判決が下ってしまうかもしれない。しかし事実を語れば、自身が罪に問われるかもしれない……。
出演はニコラス・ホルト、トニ・コレット、キーファー・サザーランド、J・K・シモンズら。洗練された演出と脚本、俳優陣の演技が高く評価され、Rotten Tomatoesでは91%フレッシュを獲得しており、イーストウッドの新たな傑作だと評されている。
しかしながら、ワーナーは本作の限定公開を「賞レースの条件を満たすため」と説明しながら、実際には賞レースの目玉としてはプッシュしていない。同社の賞レース用プロモーションサイトに取り上げられているのは
『デューン 砂の惑星PART2』や『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』『ビートルジュース ビートルジュース』『マッドマックス:フュリオサ』などで、『Juror No.2』のタイトルはどこにも見当たらないのだ。
すなわち、現時点でワーナーは、興行・賞レースの両面で本作にまるで期待していないのである。実際の意思がどうであれ、それが暗黙のメッセージだ。
確かに『アメリカン・スナイパー』(2014年)以来、イーストウッドの作品はアカデミー賞で大きな存在感を示していないし、前作『クライ・マッチョ』(2021年)はコロナ禍とはいえ全世界興行収入1651万ドルという悲惨な結果だった。
しかし、『運び屋』(2018年)と『ハドソン川の奇跡』(2016年)はともに1億ドルを突破するヒットとなっていたではないか――。
むろん、ワーナーが躊躇するのも無理はない。コロナ禍以降のハリウッドに訪れた業界構造の変化は、
引用元: ・【映画】クリント・イーストウッド最新作、北米でひっそり公開 『ゴジラ-1.0』北米再上映が好調
どんなに努力しても、ダメなときはダメ、ってことにする。
夢を覚まさせる映画。
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