引用元: ・「無敵の人」が生まれやすい中国の無差別犯罪 監視カメラは意味がない [662593167]
今年9月18日に中国広東省深圳市で発生した日本人学校児童の刺殺事件から約1ヶ月が経った。中国側は相変わらず、容疑者の動機を明らかにしていない。日本政府は通常よりも強く抗議しているように見えるものの、暖簾に腕押しだ。もとより報道が小さかった中国国内はもちろん、日本国内でも他のニュースの洪水のなかで事件への関心は下がっている。 日本側が事件の大きな要因だとみていた、ショート動画サイトの日本人学校に関するデマ動画は減ったものの、その他の反日動画は現在も野放しで、再発の懸念は充分にある。ごく一部の人しか対象にならない日本人長期拘束と比べても、一般の駐在員やその家族が巻き込まれる可能性がある点で、中国駐在のリスクのひとつとして認識したほうがいい問題だろう。
いっぽう、事件翌日に中国外交部報道官が「類似の事件はいかなる国でも起きる」と発言したことは、日本の世論を逆なでした。中国側には事件の外交争点化を避ける意向があったと思われるのだが、彼らはなかば「本気」でそう考えていた可能性もあるように感じる。
理由は「日本人学校の児童がターゲットになった」という一点を除けば、こうした無差別殺人や通り魔それ自体は、中国では「めずらしくないこと」だからだ。
■監視社会でも「止められない」犯罪 先に断っておけば、近年の中国の治安は大きく改善している。理由はさまざまだが、なにより監視カメラの普及と、金銭の授受や通信履歴・位置情報などのあらゆる個人情報がスマホに紐づけされて追跡可能になったことが大きい。中国の庶民には、治安の向上につながった監視社会化を歓迎する人もかなり多い。
監視社会化は「罪がバレると困る」人の犯罪抑止に有効である。つまり、犯罪後の日常生活を考え、メンツなり家族なり資産なり失うものがあるタイプの人物は、簡単に身元が割れてしまう状況では悪事を思いとどまるのだ。
ただ、これは逆に言えば、失うものがない人による無差別殺人や通り魔は、監視社会でも防ぎきれないということである。中国でこの手の犯罪の犯人はしばしば死刑になるが、人生に投げやりになった人に、厳罰は抑止効果を持たない。
最近の中国で増えているのが、このタイプの犯罪である。以下、今年に入って海外の中華圏で情報が流れた、無差別襲撃・殺人に近い事件を列挙していこう。
■大量に発生する無差別事件
念のために書いておけば、2001年の附属池田小事件、2008年の秋葉原無差別殺傷事件、2019年の登戸通り魔事件など、日本でも似たような事件はある。中国の人口は日本の10倍以上なので、単純な母数の問題として「危険人物」の数や被害人数は多くなる。ただ、今年はうんざりするほど多いのは確かである。
習近平体制下の中国当局は、報道の「正能量」(≒明るく正しい内容)を重視し、社会不安を煽る情報発信を厳しく規制している。だが、事件が多ければ話は口コミで広がる。なにより、当局が削除態勢に入る前に微博や微信(それぞれXやLINEに似た中国アプリ)にアップされた現場の画像や動画は、やはり人の目に触れていく。
■コロナ禍と「詰む人」の増加 気の毒なのは、近年のコロナ禍の影響で経済危機に陥り、債務の不履行を余儀なくされた人たちだ(詳しくはジャーナリストの高口康太氏が『東亜』8月号に寄稿した記事を参照)。失信人は、本人に反省の意思がない、所在が確認できないなどの悪質性がなければ即・処罰とはならないともいうが、当局のミスや本人の悪意なき過失で認定されることはあり得る。
航空機や高速鉄道での遠距離移動ができず、ネットに「ダメ人間」としてのデータが残った状態で、事業や生活の立て直しは不可能に近い(なお、中国に自己破産制度はない)。だが、たとえ困窮しても公的福祉は貧弱だ。往年であれば、人生に失敗しても他の省に逃げてしまえばなんとかなったが、現代はデジタル監視によって中国国内のどこに行っても逃げられない。
深圳事件の容疑者が失信人かは不明ながら、事業に失敗して債務を抱えていたことが日本側の報道で明らかになっており、似た状態だったとみていいだろう。ただでさえ巨大な格差が存在するうえ、失敗するとリカバリーが効かない社会だからこそ、「献忠」がしばしば選択される。
■「無敵の人」が生まれやすい中国
近年、中国のネット上では「無敵之人」というスラングも登場している。もともと、日本で2008年の秋葉原無差別殺傷事件が起きた際に、犯人の加藤智大のように社会的信用が低く逮捕リスクがない人物を指して、ひろゆき(西村博之)が使いはじめた「無敵の人」という言葉が、中国に輸入されている形だ。
中国では報道や言論が統制されているため、日本と比較すると模倣犯が起きにくい環境のはずだが、中国の社会環境は日本以上に「無敵之人」を生み出しやすい。加えて、外国人はそうした人たちの投げやりな行動のターゲットに比較的選ばれやすく、今年に入ってからはオーストラリアやスイスなど海外で「献忠」的な事件が起きた例もある。
もちろん、こうした事件を起こす人はごくひとにぎりにすぎない。ただ、中国の新たなリスクとして、日本人も認識しておいたほうがいいことは確かだろう。
なら仕方ない
皆でやれば闇バイト !
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