トヨタ自動車など日本の自動車業界は今、戦々恐々だ。習政権が2023年12月1日から黒鉛(グラファイト)の輸出を許可制にしたことがきっかけだ。黒鉛は車載リチウムイオン電池で最重量の電極材料で、中国はその生産で世界の8割近くのシェアを持つ。日本の自動車業界はほぼ全面的に中国産に頼っており、輸出不許可になると、ハイブリッド車の生産中止に追い込まれる恐れがある。
経団連は今年1月、200人を超える訪中団を派遣したが、主たる目的は中国の李強首相に会って黒鉛供給で善処を陳情することだったが、事態は少しも改善していない。習政権は日本側の狼狽(ろうばい)をみて、ますます図に乗ってくるに違いない。黒鉛がほしければ、新技術を出せ、米国の対中ハイテク輸出規制に同調するな、というふうに、無言の圧力をかけてくるだろう。
ここでうろたえて、下手に習政権の言いなりになってはならない。
いったん譲ってしまうと、次から次へとさらなる難題をつきつけられ、虎の子の技術を奪われるのがおちである。実際に、これまでの「日中友好」の歴史はこのプロセスであり、日本の高い技術や製造ノウハウが対中流出する繰り返しだった。結果が、中国による自動車産業などのサプライチェーン支配である。
習政権側に弱点はある。他ならぬ、習政権の需要無視、生産偏重主義が招いた過剰生産である。黒鉛の場合、中国の輸出価格は暴落状態である。
中国税関総署のデータから黒鉛輸出単価を算出してみると、今年5月の単価は2022年3月の半値にまで下がっている。輸出規制は下落を止める手段なのだ。
本欄では中国製EVブームはバブルだとすでに論じたが、黒鉛を使うリチウムイオン電池自体、生産バブルと言っていいだろう。中国勢に加え、韓国勢、さらに日本のパナソニックが激しく競合している。
グラフは中国のEV車載用リチウムイオン電池の輸出量と1基当たりの単価である。輸出は22年半ばに頭打ちとなり、価格は昨年末から下落基調にある。これでは黒鉛相場が崩落するのは無理もない。EV用モーターに使われるレアアース(希土類)も世界シェアの7割を握る中国の生産過剰がひどくて暴落し、もはや希少(rare)とはいえない。日本側の対抗手段は習政権が武器にする中国産品を買わないことだ。 (産経新聞特別記者)
週刊フジ 田村秀男 2024/7/28 19:00
https://www.sankei.com/article/20240728-RRZ2WF4RHJBP7BT7RYEKEZHJJ4/?outputType=theme_weekly-fuji
引用元: ・【産経新聞】中国の原材料供給停止にうろたえるな [7/29] [ばーど★]
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