JR中央・総武線の高円寺駅で17日午前7時20分ごろ、中野発三鷹行き下り普通電車が、停止位置を60メートル通り過ぎて止まる「オーバーラン」を起こし、体調不良を訴えた30代の運転士が乗務を交代した。実は、中央・総武線各駅停車(三鷹-千葉間)の運行を担当する「中野電車区」では、運転士が体調不良でオーバーランした後に乗務中断するケースが、過去3年間に約40件も発生している。原因不明の体調不良に、運転士らの間では「中電病(なかでんびょう)」として不安が広がっている。(小倉貞俊)
◆「記憶あいまい」「意識もうろう」「視界ぼやけた」
JR東日本などによると、この日のオーバーランでは、運転士が車両を正常の停止位置に戻して乗客を乗り降りさせたが、めまいのような症状を訴えて別の運転士に交代。病院に救急搬送された。下り4本に最大13分の遅れが出て、1000人に影響が出た。2日午後にも、総武線の車両が代々木駅で20メートルほど停止位置を超過。運転士は乗務を中断し、病院で受診したという。
同様のトラブルは中野電車区の運転士の間で多発している。JR東日本輸送サービス労働組合によると、2021年6月以降、同電車区で約40件発生。運転士は20〜40代の約30人で持病などはないが、「記憶があいまい」「意識がもうろうとした」「視界がぼやけた」と訴えることが多いという。
◆原因究明のため、事務所の給水器の水質検査まで
こうした事案は、他の路線では年に数件あるかどうか。今年1〜6月に限ると、東京エリアの約20路線で乗務の中断が起きたのは、常磐線快速と山手線で1件ずつあっただけだが、中野電車区では14件に上る。同電車区だけが突出しているため「事務所の給水機に睡眠薬などが混入されたのでは」とさえ疑われたものの、水質検査で異常はなかった。
体調不良の原因は何か—。組合の担当者は「19年に乗務員の勤務制度が改正されて、乗務距離や拘束時間が増えた。20年には職場転換制度により運転士が多く転出して、超過勤務や休日出勤も多くなった」と指摘。勤務制度は他の電車区でも変更されているが、「特に中野電車区で勤務シフトが過密になり、労働環境が厳しくなった」とみる。
◆JR東日本「中野電車区で多発は事実。原因は一概には言えない」
オーバーランを1日に複数回起こし、乗務を中断した30代の運転士は、取材に「疲労やストレスの蓄積に自分では気づけなかった。人の命を預かる身として、適切な判断ができなかった」と振り返った。
組合は「このままでは重大事故につながりかねない」と、5月以降、社側に対応や調査を要請。社側は「原因は個々の運転士で異なる。体調管理の注意喚起をしていく」と回答するにとどまった。
本紙の取材に対し、JR東日本の広報担当は「お客さまには、ご心配とご迷惑をかけて大変申し訳ない」とした上で、「(オーバーランが)中野電車区で多く発生しているのは事実だが、原因は一概には言えない。制度の改正は中野電車区に限ったことではない」と説明。「中電病」の真相は不明のままだ。
東京新聞 2024年7月18日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/340669
引用元: ・【中電病】電車のオーバーランがなぜか多発 中央・総武線の中野電車区、3年で40件 [蚤の市★]
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