新宿大ガード下の有名人
東京都が発表した路上生活者概数調査によると、令和6年(2024)1月時点での都内23区の路上生活者は372人にのぼり、そのうちの20%にあたる75人が新宿区で生活している。これは都内でもっとも多い数字で、いまだに新宿駅周辺で寝泊まりする路上生活者はあとを絶たない。
そんななか、6月27日には新宿駅西口地下1階にて、路上生活者の女(51)が警察官をハサミで刺すという殺人未遂事件が発生。集英社オンラインは過去記事にて事件を報じており、そこでは「西口の再開発の影響で、駅前の屋根がなくなって寝泊まりする場所が減った」「福祉(生活保護)には一度頼ったけど、耐えきれずに戻ってきた」など、路上生活者たちの悲痛な声を紹介した。
しかし、この女性に限っては状況が違うようだ。本間弥和さん、59歳。新宿・歌舞伎町からほど近い新宿大ガード下でおよそ4年間にわたって寝泊まりを続けているベテラン路上生活者だ。
今年初の猛暑日を記録した7月4日の夕方4時ごろ。複数のJR線が走る高架下、およそ40メートルほどの路地には段ボールでできた自作の寝床が並んでいて、その一角に彼女はポツンとたたずんでいた。
無造作に伸びきった白髪を後ろでまとめ上げ、昼間から缶チューハイを飲んでいる。その姿を見た歩行者のなかには、足早にその場を通り過ぎようとする者もいた。記者が取材を申し込むと、「ここ(新宿大ガード下)の現状を報じてくれるなら」と快く応じてくれた。
「まず勘違いされがちなんだけど、ここには私のようなホームレスばかりがいるわけじゃないの。家がある人が大半だし、トー横キッズの子とか、トー横でお酒を飲む『界隈民』が集まる感じかな。
年齢とかは関係なく、そこらへんの界隈で私と知り合った人がここにふらっとやってきてダベりながらお酒を飲む。そのなかには私にいろいろと悩みを相談してくる人もいるし、私がつくったご飯を楽しみにしている人もいるよ」
若者に慕われる本間さん
現在、新宿大ガード下で寝泊まりしている路上生活者は、本間さんを含めて2人のみ。そのほかにここを訪れるのは、いわゆる”歌舞伎町の住民”のほか、NPO団体や新宿区の職員になるが、そのたびにいろいろなモノを差し入れしてくれるという。
「そりゃ大ガード下は、サラリーマンから歌舞伎町に出勤する人までいろんな人がつかう“通勤路”になってるから、私の存在は広く知られてるの。だからパチンコの余り玉で交換したお菓子をくれたり、ノンデリバリー(=配達中止)になった食べ物をくれる出前サービスのお兄さんもいる。
宴会シーズンになると、余ったお寿司や肉を居酒屋のスタッフがもってきて『もしよかったらこれいりますか? 捨てるよりはマシなんで』と言ってくることもあるよ。おかげさまで、ここに住んでからはあっち(=新宿中央公園)の炊き出しには行ったことないし、西口のホームレスとは直接的な関わりもほとんどないの」
そう語る本間さんの元には、この日も多くの少年少女が訪れてきては「ママー、元気してる?」「ママー、今日○○(人の名前)見た?」などと楽しげに話しかけてくる。そのなかにいた金髪の少女は現役のトー横キッズで、「広場(=トー横)に行く前のヒマつぶしのような感覚でここに来てる。
いろんな人と話せるから楽しい」と言う。小麦色に日焼けした19歳の少年も元トー横キッズで、現在は現場仕事で汗を流す日々を送っているというが、「たまにここに来ると懐かしい気持ちになるんです」と頬をゆるませる。
「ここには僕のような元トー横キッズの子が集まることもあって、同窓会のような気分になるんですよね。トー横に通っていたころは、リーダーの指示で広場の掃除や炊き出しを手伝ったりもしましたけど、まあお酒のイッキ飲みをしたりOD(=過剰摂取)したりと遊んでました。
引用元: ・〈新宿大ガード下〉「ツバを吐かれたり通報されることも」 ママと呼ばれるホームレス女性が語る路上生活の実態 [PARADISE★]
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