ただ、いずれにせよ、終身雇用が当たり前の世代にとっては、あまり喜ばしい制度ではありません。今回は、早期退職にまつわるある男性のエピソードです。◆他人ごとではなかった「早期退職者募集」
工業機械メーカーに勤めて20年の白石さん(仮名・44歳)。若い頃は営業一筋で、それなりの評価を受けてきたものの、30代後半から営業成績が頭打ちになり、取引先のサポートを行う部署に異動したそうです。
「私には取りえがあまりありませんが、あえて言うなら”まじめ”なところですかね。営業職はコツコツとできる仕事だったので好きでしたが、異動に対しては異議はありませんでした。私の力不足ですから」
やり甲斐は半減したものの、不平・不満は言わずに頑張っていた白石さん。そんな中、勤続20年以上の従業員を対象にした「早期退職の募集」が発表されたそうです。
「とうとう来たか、という感じでした。営業職を離れてしばらくしたころ、親会社が部品の調達先をベトナムに変更したこともあり、業績も下降気味だったと聞いています。会社としては背に腹は代えられない決断だったのでしょうね」
◆信頼のおける先輩からの誘い
今回の「早期退職者募集制度」では、退職金の増額に加え、再就職のあっせんまであるとのことでしたが、白石さんはあまり興味を持てなかったといいます。
「少しだけ心が揺らぎましたが、今さら新天地に出向いてそこでイチから頑張る勇気と体力には自信はありませんね。私は、このまま会社にしがみつくつもりでした」
そんな矢先、入社以来信頼している先輩上司のMさんから思わぬ誘いを受けます。それは、今までの人脈を元にして、新しい工業部品の製造会社を設立するとのことでした。
「Mさんは、会社の中でも主要なメンバーであり、日本だけでなく世界各国に多くの人脈があったため、何の違和感もなくすぐに興味が湧きました」
◆希望に満ち溢れた新天地への準備
会社にしがみつくつもりだった白石さんは、その姿勢を180度変え、Mさんと話し合いの場を設けた際、「白石くんには、責任あるポストに着いてもらうつもりだ。是非一緒にやろう」と言われ、早期退職を決断しました。
「『ぜひとも一緒にやろう』というフレーズが私に響きました。今まで、頼りにされたり評価されたりすることがなかったので、とても新鮮でした。その夜、妻や家族に経緯を話し、私の新たな挑戦に対して理解を得ることができました」
早期退職の締切日まで1週間ほどありましたが、迷わず退職への意思を表示し、所定の手続きを進めたそうです。
「Mさんとは、その後も何度か新ビジネスについてディスカッションを行い、大まかな計画は把握できていました。本格的な事業開始は半年ほど先なので、これまで苦労をかけてきた家族と一緒に国内旅行を計画しました」
◆まさかの「音信不通」
残務処理を行いながら、ついに古巣の会社を巣立つ日が迫ってきたころ、一通のLINEメッセージが届いたといいます。
「送信主はMさんでした。『とにかく新会社設立の準備でバタバタしているので、しばらく連絡が途絶えるかもしれないが、安心してください』という内容でした。何の疑問も、違和感も抱かず、私は計画していた家族旅行に出かけました」
ところが、それから1カ月たっても、2カ月たっても、Mさんからは一向に連絡が入りませんでした。さすがに不安になった白石さんは、Mさんの自宅に電話したり、メールやメッセージなど、あらゆるSNSを利用して連絡を試みました。
◆味わった「人間不信」と前途多難な日々
すると、3日ほどたったある日、1通のメッセージが届きました。
「新会社設立のために動いていたが、海外のコーディネーターにお金をだまされた。そのために、緊急で動き回っていたので連絡もできなかった。新会社の設立計画は頓挫した。本当に申し訳ない。私を探さないでほしい」
晴天のへきれきとはまさにこのことで、白石さんは一瞬頭が真っ白になったといいます。
引用元: ・上司からの引き抜きで早期退職 「人間不信になりました」44歳男性の後悔 [PARADISE★]
何も言わなさそうな相手に先にいうからね
判断力のない自分自身への不信だろうな
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