このところ、中国が国際商品市場でさまざまな商品(=コモディティ)を急ピッチで買い上げている。その特異な動きにアナリストたちは、中国は「最終兵器」を用意しているのではないか、と疑念を抱いている。
「中国は何か大きなことに備えている。重要な資源の備蓄を増やしているので、それがますます明らかになってきている。中国人民元の一回限りの大幅切り下げを準備しているのだろうか?」
ステノ・リサーチのアンドレアス・ステノ・ラーセンCEOは先日、こう問いかけた。
通貨切り下げは、世界的に深刻な影響を引き起こす可能性があるため、経済学者の間では経済的な「核オプション」とも評されている。
例えば、人民元を意図的に切り下げることで、中国は自国の商品の価格をより安く、より競争力のあるものにして輸出を増やすことができる。だがそこには、貿易相手国を激怒させる、アメリカとの貿易戦争を悪化させる、といった深刻な影響も伴う。
だが、金や石油のような資源をあらかじめ備蓄しておけば、貿易摩擦が起きてもある程度の経済的安定と交渉力を得ることができるし、人民元安による輸入コスト増やインフレなどの悪影響も相殺することができる。
中国の中央銀行は今年3月も、金の購入を続けた。金価格が過去最高値を記録し、人民元安が続いているにもかかわらず、中国は17カ月連続で金保有高を増やしているのだ。
エコノミストらはこうした中国の行動を、2022年のウクライナ侵攻でロシアが受けた経済的打撃を目の当たりにした中国政府が、アメリカとの地政学的緊張の中で準備通過の分散を図っている、と分析している。
かつて国際通貨基金(IMF)で中国を担当していたコーネル大学のエスワール・プラサド教授は、「公的部門の金購入は、外貨準備をドルなど西側の通貨から分散させたいという願望を反映している」と本誌に語った。
民間部門による金地金や宝飾品の保有量の増加については、「中国の金融システムから資本を移動させる方法であり、国内の政策リスクが背景になっている可能性がある」と、プラサドは言う。
世界最大の輸出国である中国にとっては、通貨切り下げは魅力的かもしれない。国内のデフレと消費需要の不足に直面する中国は、ますます輸出を増やしたいからだ。
だが、この動きがアメリカやその他の主要貿易相手国との緊張を高めることは間違いないだろう。
中国の産業界はすでに、鉄鋼や化学製品など低価格の輸出品を市場にあふれさせていると非難され、各国でダンピング調査が行われようとしている。
アメリカとEUはすでに、中国の電気自動車に対する関税を検討している。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/05/post-104388.php
引用元: ・【中国の最終兵器】通貨切り下げで自国の商品の価格をより安く、より競争力のあるものにして輸出を増やし景気のテコ入れを図る、経済的な「核オプション」
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