インバウンドの復調も日経平均株価4万円超えもほとんど関係なく、このまま夜の銀座の終わりを予想する声さえ聞こえる。
銀座には高級クラブが50軒ほど。中級クラブやキャバクラ、ラウンジ、ガールズバー、カウンターバー、スナックなどを合わせて総計約1000軒が営業しているという。
中級クラブのママが言う。
「今、お金が唸っているのは美容整形病院のオーナーぐらい。それと詐欺師の幹部クラス。ある日、テレビを見ていると、逮捕された人の顔が大写しになる。どこかで見た顔だなと思っていたら、少し前、店に来た人だったり。
店はたとえ毎日、満席になっても赤字です。家賃と女の子の人件費でおおかた持って行かれ、店に溜まらない。だから閉店やママの夜逃げが多いし、中には店を閉めたくても、店内は店を借りたときの裸の状態に戻すという決まりがあるため、その工事費が工面できず、店を畳みたくても畳めない人もいる」
当然のことながら、銀座退潮の背景には景気の低迷がある。売り上げの女性(注・店と契約を結び、店を稼ぎ場にする自営業的ホステス)などには
一晩店に詰めて自分のお客が一人も来ない、つまりその日の売り上げゼロというのも珍しくない。
先のママが話を続ける。
「少し前にはパチンコメーカーやパチンコチェーンの社長、デリヘルのオーナーなんかが税金で持って行かれるよりマシと、好きな女性をママに据えてクラブを開いたものです。今はそういう話もあまり聞かない。ひところ店を潤してくれた製薬会社もお医者さんの接待が面倒になってダメ、建設業界も下請けの元請け接待があったけど、これもダメ。出版社も作家の先生の接待で使ってくれたけど、今はよほど売れる漫画家でもないかぎり接待しない。
だいたい交際費ゼロの会社が増えて、中堅の社員でもタクシーのチケットをろくに持たされていない。
店にとっていいお客様っていうのは70歳から上の世代でしょうね。銀座のよさを昔通り素直に受け入れてくれる。だけど、こういう世代のお客様は年々ご病気などで足が遠のいていく。それより若い世代の人はよほど店の女性を好きになってくれないと通ってくれない。だから店の子はお客様と同伴出勤もするし、アフターにもつき合います」
銀座の近場のホテルは長年、夕方に満室状態が続いていた。同伴で女性と部屋に入り、交わり、食事を済ましてから揃って店に顔を出す。が、客の懐具合によっては、来店をカットする場合がある。
元黒服の男性が説明する。
「店にお金を落としてこそお客です。女の子にいくら小遣いを渡そうと店には関係ない。つまりママには管理売春的な才覚が必要です。たとえば、お客がヘルプの子に目をつけて、ママにその旨を言う。するとママはヘルプの子に伝える。『今日、遅くなって悪いけど、あのお客様とお食事つき合ってくれない?』
お客は女の子と食事後ホテルに行き、別れ際、女性に車代ぐらい渡すかも知れない。だけどセックス代を渡さない客がいる。次の日、ママが『昨日はお疲れ様』って女性にナンボか渡す。そして次の請求のとき、そのお客のツケに飲み代の他、女の子代も一緒にして請求する。
つまり飲み代とセックス代がゴッチャになる中で、店の利益が生まれる。またゴッチャにしないと、管理売春でパクられかねない。お客の大半は女性目当てです。年寄りのおばさんと政治や経済の話をしに銀座に来るわけじゃない」
女性の側も男性の好みは承知している。女性は若ければ若いほどエライと心得る。時給や日当は高いほどいい。若いうちにたくさん稼ぎたいという思いがあり、「いつか銀座のクラブのオーナーママに」などという夢や希望は皆無である。出会い系アプリで探すより銀座の店はカネ持ちに出会えそう、パパ活アプリより銀座での出会いの方が信頼できそう、ギャラ飲みしてるよりお金になりそうといった考えだから、男性からのカネは自分以外の者に極力落としたくない。
だから同伴出勤の義務日などは無視、単に男性とつき合ってカネをもらい、そのまま店に出ないことにも平然としている。
引用元: ・【衰退する夜の銀座】裏面にある女性たちの「性」の自己管理
異論はあり得ない
コメント