この数年で首都圏、近畿圏では「街の風景」の一部にもなりつつあるシェア電動キックボード。
最大手の「LUUP」に関しては、電動キックボード自体を指して「LUUP」と呼ばれるなど、かつてSONYの「ウォークマン」がポータブル音楽機器の代名詞として使われていたのと同様の現象も起きていて、普及に感心するほどだ。
少々看過できないところまできている
ただ一方、悪評も非常に高まっており、信号を守らない、車道を逆走する、歩道を暴走するなど、いずれの悪評も「危険であるから」というに尽きる。
たしかに「新参者」は、批判を受けがちであり、新しい技術は初期の軋轢を乗り越えて、普及の階段を上っていくものかもしれない。
しかしながら、このところの違反の蔓延と実際の事故の多さは、少々看過できないところまできている。
そもそも、最近の都内の道路は、こうした電動キックボード以外にも、「電動〇〇」がカオス状態だ。
たとえば、電動キックと同じ「特定小型原付」には電動スクーターが参入してきたし、ここに加えてスロットルのついた違法モペッド(ペダルがあるのにモーターの動力のみで走行できるオートバイ。輸入などで購入されている)なども急速に増加してきた。
オラオラ系の若者がナンバーレスの二輪車で、ヘルメットもかぶらず、ペダルも回さず、暴走しているのを、都内に暮らす方なら見たことがあるはずだ。
これが違法モペッドで、ナンバーがなければ公道走行自体が違法である。ただこれらは、違法であるゆえに取締りはしやすい。
これに対し、電動キックボードと電動スクーターについては、2023年の法改正で「(特例)特定小型原動機付自転車」として認められてしまったため、存在は違法ではない。小さい真四角形のナンバーが付けられているのが特徴だ。
じつは、これが大きな問題を秘めている。無免許で運転でき、歩道通行も可能なのだ。
歩道では6km/h以内で走らなければならないという規制はあるが誰も守っておらず、歩道上がカオス化している。
シェアサイクルの黒船・Lime社などは渋谷区、港区などでいち早く電動スクーターをリリースしており、これには、インバウンド観光客も気楽に乗っている。
右も左も歩道も車道もデタラメで、危険としか言いようがない状態だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f391925054598213b50460527df657d8630f8550
引用元: ・文春《LUUPによる道路のカオス化》事故ライダーの5人に1人が飲酒運転「野放しを許すな」 [567637504]
警察庁から衝撃の調査発表
警察庁交通局が「令和7年上半期における交通死亡事故の発生状況」というリリースを出した。驚くべきは、「特定小型原付」すなわち、電動キックボードおよび電動スクーターについての指摘だ。
「(特定小型原付の事故のうち)飲酒ありの構成率は約2割で、一般原付の約30倍、自転車の約22倍」
ニワカに信じがたいが、死亡事故か重傷事故を起こした電動キックボードのうち、5人に1人は飲酒運転だというのだ。
車両に乗る以上、飲酒運転は厳禁。非常に重い罪に問われる。そんなことはもはや常識で、数々の悲惨な事故の結果、法的にも厳罰化され、報道で知らしめられ、私は「飲酒運転はほぼ撲滅された」と思っていた。ところが特定小型原付においての現実は違った。
特定小型原付のユーザーの7割以上は20~30代の若い世代だ。彼らはどのようにして飲酒事故を起こすのか。
最大手LUUPのポートを見れば、都内各所あらゆるところに存在するが、特に多いのが繁華街だ。私の勤め先がある赤坂にもあちこちにポートがあり、それが飲酒運転の誘惑になっていることは事実だろう。
また、電動キックボードでだけ飲酒運転が起きてしまう、もうひとつの大きな理由は、これのイメージが自転車より「オモチャに近い」感覚であることだ。
じつは、海外でもこの感覚は同様で、パリでも、マドリッドでも、電動キックボードは交通法規を守らない。だからこれらの都市ではシェア電動キックが全面禁止になった。
特に飲酒運転による自損事故は頻繁に起きている。なかでも危ないのは段差だ。ホイール径が小さいため、段差乗り上げが苦手で、転倒しやすい。
電動キックのナンバープレートが常にベコベコなのもこれが理由だ。かつて50代会社役員の典型的な事故例があった。
飲酒運転の電動キックボードで中央区勝どきの自宅マンションに帰宅。1階の駐車場で、車止めに衝突して転倒した。頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。
先述した警察庁交通局の文書によれば、こんな事故の予備軍が2割もいる。今後も飲酒事故が起き続けるのは必定だろう。
電動モビリティ業界の正念場
もちろん、これらのことをLUUP社は把握していないわけではない。同社による渋谷のキャンペーン大看板にはたしかに「飲酒運転禁止」のアイコンが描かれていた。
しかし、そのような注意喚起で足りているかと問われれば、NOとしか言えない。そもそも原動機付なのに、無免許でも乗れることも問題ではあるが、電動キックに平気で酔っぱらって乗るという、メンタリティの改善こそが重要だろう。
LUUPは2025年「ユニバーサルカー」と称する3輪のシェアモビリティ「Unimo」をリリースした。免許返納後のお年寄りのラストワンマイルを意識したモビリティで、私はこれにはかなり注目している。
また、12月、忘年会シーズンには渋谷署と合同で「飲酒運転根絶キャンペーン」をスタートさせている。ユーザーに呼気チェックをさせてアルコールが検出されたらLUUP貸し出しを拒否する、という。
同社の岡井大輝社長は「このまま電動キックを世の悪役のままにしているつもりはない」と危機感を示している。はたしてうまくいくかどうか。
キャンペーンの成否は未知数だが、しかし、やれることはやるべきだろう。時間はもうそんなに残されていない。電動モビリティ業界はまさに今が正念場だ。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2026年の論点100 』に掲載されています。
こうなるのは目に見えてただろ
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