2014年5月、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で演説した晋三首相(当時)は、中国軍関係者からこんな質問を受けた。
「歴史に関する視点を聞きたい。首相は靖国神社に参拝したが、日本軍に殺された何百万人もの中国、韓国人の魂にはどんな姿勢を表明するのか」
前年12月に靖国に参拝した氏と日本を、歴史問題でとっちめてやろうという魂胆がうかがえる。
ところが、氏が「法の支配の順守」と「平和国家、日本」を強調し、「国のために戦った方に手を合わせ、ご冥福を祈るのは世界のリーダーの共通の姿勢だ」と答えると、会場から大きな拍手が湧き起こったのである。
氏は帰国後、筆者にこう振り返った。
「中国は、マニュアル通りに日本を批判するから場違いになってしまう。日本が『海における法の支配を守ろう』と言っているときに、70年前のことを持ち出しても『何を言っているんだ』となる。私も拍手が起こるとは思わなかったが」
今回の高市首相答弁の件もそうである。自身は東中国海や南中国海で領土的野心をむき出しにわが物顔で振る舞いながら、80年以上も前の歴史問題を、しかもご都合主義で持ち出して世界に共感が広がる道理がない。にもかかわらず、中国は性懲りもなく似たような言動を取り続ける。
「(高市首相の答弁は)中国への露骨な内政干渉であり、第二次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序に挑戦するものだ」「アジアや世界の平和に深刻なリスクをもたらしている」
中国の傅聡(ふそう)国連大使は15日、米ニューヨークの国連本部で開かれた安全保障理事会で日本を非難した。
だが、1951年に連合国諸国と日本との間で締結され、戦後の国際秩序を定めたサンフランシスコ講和条約を「不法かつ無効」と否定しているのは中国の方である。また、国防費を過去30年間で30倍以上に増やし、世界の平和に深刻なリスクをもたらしているのも日本ではなく中国である。
小泉進次郎防衛相は15日の参院予算委員会で、日本の防衛費増額を批判する共産党の山添拓氏に対し、「言うべき相手を考えてほしい」と反論した。その上で小泉氏は、中国は日本を上回る軍事費の増強をしていると指摘したが、現実を直視さえすれば誰でも分かる。
日本の領海や領空を侵犯するのはいつも中国の方であり、日本から仕掛けることはない。第一、中国が軍拡に励んでこなかったら、日本も防衛費の増加はもっと最低限で済んだ。
中国が、日本を批判すればするほどその言動と論理の矛盾がクローズアップされていく。冷静で適切な反論はその都度必要だが、11年前のシャングリラ対話の時点で既に通用しなかった歴史問題が現在でも有効だと思い込んでいる中国のありようを見ると正直なところ思う。中国が墓穴を掘り、勝手に孤立していくのを静観するのも案外、悪くないではないかと。ちょっと不謹慎かもしれないが。
(論説委員兼政治部編集委員)
https://www.sankei.com/article/20251218-UJZHPXUO4VLGPBZU5I73OD66UE/
引用元: ・【産経コラム】中国が墓穴を掘り、勝手に孤立していくのを静観するのも案外、悪くないではないか [12/18] [昆虫図鑑★]
日本は粛々と脱中国を進めるだけ
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