■店主が「毎日が戦い」と語るジレンマ
中谷堂の代名詞となっているのが、代表の中谷充男さんと職人たちが臼に杵を激しく打ち、怒涛の掛け声と共に行われる「高速餅つき」だ。
その圧倒的なパフォーマンス性から、この餅つきは国内外の観光客の注目を集めている。筆者が訪れた日も、お盆明けの平日だったが、店先には観光客が30人ほど集まり、次々にお餅が売れていた。
ところが、多くの人を惹きつける餅つきの裏側には、店主・中谷さんが今も抱える深刻な葛藤が存在する。
中谷さんにとって、高速餅つきはあくまで、美味しいお餅を作るための古くからの純粋な手法であり、「芸として見てもらおうと思い、やっているわけではない」という強い信念があるからだ。
にもかかわらず、特に外国人観光客に餅つきが大道芸人のように映ること、あるいは笑いの対象になることに苦悩している。
取材の日、中谷さんが餅つきを始めるや否や、観光客が一斉にスマホを取り出し、撮影し始めた。
すると、スマホを構えている外国人の女性が声を上げて笑った。悪気があったわけではないと思う。ただ、背中でその声を聞いた筆者は、日本文化へのリスペクトがあるとは言い難い反応だと感じた。
中谷さんにもその声が聞こえていた。インタビューの中で彼は「よくあること」と言いながら、こう語った。
「外国の方にしたら、どこか芸のように映るんやろうね。どのように捉えられても仕方ないけれど、別に芸として見てもらおうとやっているわけじゃない。純粋に日本古来のお餅つきとして見てくれるのはありがたいけれども、滑稽に映るのは嫌やなと思いますね」
かつては過度に盛り上がる客に対して、「静かにしてもらえますか」と注意したこともあった。だが、ネットで「中谷堂に怒られる」という口コミが出たため、今は何も言わなくなったそうだ。それでも、彼の心の中は「毎日葛藤との戦い」だと言う。
「高速餅つき」は、つきたての餅を食べるという最優先事項のためにあくまでも真面目にやっていること。決して、笑わせようとしているわけではないのだ。
東洋経済オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/ae75a1e80c920371139b786955b47f4b692ac197
引用元: ・【奈良】「パフォーマンスじゃないのだが」“高速餅つき”大人気の陰で店主が苦悩するもっともな理由 [おっさん友の会★]