イタリアのジョルジャ・メローニ首相(2025.7.15)(写真:ロイター/アフロ)
イタリアのジョルジャ・メローニ首相は10月7日、「ジェノサイド(大量虐殺)の共犯」としてICC(国際刑事裁判所)に告発されたと明らかにした。
告発したのは約50人の法律関係者などで、イスラエルへの武器支援に関わったとしてメローニ以外にも複数のイタリア政府閣僚を告発している。
告発を受けてICCがどのように反応するかは未知数だ。
しかし、メローニらイタリア政府首脳に対する告発にはそもそも疑問もある。
最大の疑問は「なぜイタリアか」、そして「なぜジェノサイドの共犯」として告発したかだ。
エキスパートの補足・見解
第一の疑問は、なぜイタリア政府首脳が名指しされたかだ。
イスラエルの兵器輸入に占めるイタリアの割合は1%程度で、米国、ドイツがこれをはるかに上回るからだ。
第二に、なぜ「ジェノサイドの共犯」で告発したかだ。ICCはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らに逮捕状を発行したが、罪状は人道に対する罪などでジェノサイドではない。
とすればメローニらを告発するなら「人道に対する罪の共犯」の方が自然だったはずだ。
この二つの疑問を重ねると、考えられるのはこの告発がイタリア内政の延長である可能性だ。
メローニ政権は反移民、反EUなどが鮮明で、極右政権と認知されている。さらにイスラエル批判に慎重で、イタリアは欧州主要国のなかでパレスチナ国家の承認に踏み切らない国の一つでもある。
その一方で、イタリア国内では「イタリア製以外の兵器もイタリア経由でイスラエルに輸出されている」という批判が噴出していて、9月には各地の港がデモ隊に封鎖されるなどした。
つまり「ジェノサイド」というパワーワードをあえて用いたICCへの告発は、国内政治の文脈でメローニ政権を追い詰めるための手段である公算が高い。それはいわば国内対立の国際化とも呼べるかもしれない。
六辻彰二
国際政治学者
引用元: ・イスラエルへの武器支援をめぐりイタリア首相が「ジェノサイドの共犯」でICCに告発される 疑問の多い告発の背景 [WATeR★]