若者流出、残される高齢世代
東北新幹線と秋田新幹線で東京駅から約3時間45分。東京から遠いこの秋田市に2020年秋から勤務し、間もなく5年になる。人口減少率が都道府県で最も高く、「少子高齢化の課題先進県」とも言われる秋田が変わるには、長期的に「二つの見直し」が必要だと考えている。それは「無意識の思い込みの可視化」と「秋田の強みの再発見」だ。
まず秋田の現状を伝えたい。私が来たころの県人口は約95万人だったが、今年8月には約88万人となり、7万人以上減った。年間で1万人以上の減少ペースだ。
若者が秋田から出てしまうと、残されるのは親や祖父母の高齢世代だ。現役当時よりも収入が減っている高齢者は現状維持志向が働き、地域はますます保守化して新たな発想が乏しくなりがちだ。秋田は、高齢者向けの施策が優先される「シルバー民主主義」のリスクが極めて高い、と指摘されている。
秋田は東京より約20年人口構造が高齢化しているとの専門家の見方もあり、「東京との価値観や考え方の差は約20年」と言えるかもしれない。そして若者が減ることで、このギャップはさらに広がりかねない。産婦人科などの医療サービスや消防機能などの縮小、水道料金の値上げなどが少しずつ進んでいる。人が減った山間地ではクマやイノシシ、シカの出没が増え、人身被害が相次いでいる。
保守的な価値観、生きづらさの根源に
なぜ若者が生きづらさや苦しさを感じ、秋田を離れるケースが後を絶たないのか。その大きな理由の一つが、中高年層が抱く、男女の役割分担に関する数々の「無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)」だとされる。
「女のくせにでしゃばりだ」「男性は仕事、女性は家庭」。秋田県が作製したパンフレットには、こうした具体的な「無意識の思い込み」が紹介されている。この価値観が、女性や若者へのさまざまな暗黙の圧力となる。実際に私も、県警幹部に女性が非常に少なく、一方で食生活の改善にかかわる推進員はほぼ女性と、過度に男女比が偏る現実に違和感を抱くことがある。
秋田ではかつて、農作業のために力のある男性の手が不可欠で、男性の発言力が強かったことの名残、という見方もある。だが政治や行政、企業などの組織が従来の価値観や慣例に強くこだわり、女性や若者に高い給料やポストなどの魅力的な職場を提供できないままでは、若者は愛想を尽かしてしまうだろう。
「秋田の強み」実はいろいろ
一方で必要なのが、「秋田の強み」の徹底した見直しや発見だ。地元でよく耳にするのが「秋田には何もない」というキーワードだ。だが…(以下有料版で,残り822文字)
毎日新聞 2025/9/12 16:00(最終更新 9/12 16:00)
https://mainichi.jp/articles/20250912/k00/00m/070/047000c
引用元: ・東京との価値観の差は20年 人口減の秋田を変えるために必要なこと [蚤の市★]
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