■目立たぬ形で進む“浸透”
北海道の雄大な自然が広がる一角。そこにはかつて、地元住民が大切に守ってきた豊かな水源があった。だが今、その一帯は高い塀に囲まれ、人の気配もないまま静かに放置されている。「観光開発地」として買われたはずのその土地活用の真の目的は、果たして何だったのか――。
元警視庁公安部外事課の捜査官として、私は長年、外国による情報工作や防諜(カウンターインテリジェンス)に携わってきました。現在はセキュリティコンサルタントとして、企業や自治体のリスク対策を支援しています。その中で私が最も強い危機感を抱いているのが、「中国資本による日本の土地・不動産買収」という静かなる侵略です。
「静かなる侵略」(サイレント・インベージョン)という言葉は、2018年にオーストラリアで刊行された本の題名に由来します。その本では、オーストラリアの政界(英語版)や市民社会における中国共産党の影響力増大について書かれており、港湾など重要施設周辺での、中国の経済的な影響力拡大を「侵略」の一種として、著者は警鐘を鳴らしたのです。
同じように、日本における土地・不動産買収も、単なる経済活動と捉えるべきではありません。安全保障、地域社会、さらには日本文化そのものへの長期的な脅威といえる問題です。
■表向きは「観光開発」や「リゾート建設」
私がこの問題に最初に強い関心を抱いたのは、北海道・ニセコ周辺の土地売買に関する相談を受けたときでした。地元では考えられないほどの高値で、水源地や自衛隊の演習場付近の広大な土地が次々と買われていたのです。
表向きは「観光開発」や「リゾート建設」としての取得ですが、実際には長期間放置されたまま。売買に関わった法人の多くは、香港やマカオなどを拠点としたフロント企業で、その背後に中国本土の資本があることが多く見受けられました。
同じように、長野県白馬村では、スキー場周辺の森林が中国資本により買収され、通信インフラへの干渉が懸念される場所に監視機器と見られる設備が設置されたという情報も寄せられました。
沖縄県の宮古島でも、自衛隊の新設駐屯地の近くで不自然な土地買収が確認され、その後に企業の登記が突如変更されるなど、不透明な動きが続いています。
これらの土地には共通点があります。それは「水源地」「自衛隊施設周辺」「通信・監視に適した高台」など、戦略的価値を持つ場所であるということです。これが偶然だとは、私には到底思えません。
■土地獲得の狙いの背後に「千人計画」か
中国には「国家情報法」や「国家安全法」という法律が存在します。これにより、国内外の中国企業・個人は、国家の要請があれば情報提供に協力する義務を負います。つまり、中国企業が日本国内で保有する土地や施設が、いざというとき国家の情報拠点になる可能性を否定できないのです。
実際、中国が展開する「千人計画(タレント・プラン)」では、外国在住の中国人や帰化者を対象に、自国への技術・情報提供を促す動きが報告されています。私自身、公安での在任中、ある日突然、中国政府関係者が日本在住の中国人に接触し、親族の年金支給などを引き換えにスパイ活動を持ちかける事例を何度も見てきました。
また、日本に移民して帰化する者が増えていけば、選挙で多数を占め、中国系日本人の発言力が非常に強くなる事態も想定されます。北海道を例にとると、全道で3500以上の過疎集落があり、その半数以上は、山間部や中間部ではなく、都市的地域または平地です。つまり普通に住むことのできる場所に、多く過疎地域が存在しています。過疎集落の平均人口は150人強ですから、そういった場所で土地を買い占め、「中国人コミュニティ」を作るのは、比較的容易なのです。
こうした“非公然活動”は、現行の日本の法律では処罰が難しいため、水面下でじわじわと進んでいるのが現状です。
以下全文はソース先で
■「町内会も機能しなくなった」と嘆く人も
■「静かな侵略」になぜ政治は動かないのか
■まだまだ“抜け穴”がある
■銃でもミサイルでもない「静かな侵略」への備え
■「国家の土台」が蝕まれている
東洋経済 2025/08/27 10:00
https://president.jp/articles/-/101162?page=1
引用元: ・元公安捜査官「銃やミサイルを使わない中国の侵略はもう始まっている」 …土地・不動産買収 狙いの背後に「千人計画」か [8/27] [ばーど★]
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