デイリー新潮2025年08月24日
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肥薩おれんじ鉄道は、九州新幹線の開業に合わせて鹿児島本線の八代駅~川内駅間を引き継ぎ、2004年に開業した第三セクター鉄道である。いわゆる「整備新幹線」の整備によって生まれた第三セクター鉄道は、開業以来あの手この手で様々な集客策を打ち出している。肥薩おれんじ鉄道はその先駆的な存在であり、全国的な話題になった取り組みも多い。【取材・文=山内貴範】
例えば、2013年には観光レストラン列車「おれんじ食堂」の運行を開始し、ユニークなデザインの車両と料理のクオリティが評判となり、鉄道ファンや観光客から好評を博した。ほかにも、老朽化していた阿久根駅の大胆なリニューアルや、映画「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」への撮影協力など、地域に根差しつつ、沿線の魅力を全国に発信する取り組みがたびたび反響を集めた。
ところが、現在、肥薩おれんじ鉄道に大きな問題が起こっている。運転士不足を理由に、8月1日から一部列車が運休するようになったのである。それまで平日51本運行されていた列車のうち、下りが9本、上りが9本、合計18本が運休となった。これは全体の3分の1となり、開業以来最大の減便となる見込みという。
実は、同様の運転士不足による減便は、他の鉄道会社でも検討されているといわれる。既に、バス会社は人手不足が理由の減便を行った例が相次いでおり、地方はもちろん、乗客が多い首都圏でも行われている。地方鉄道はどうあるべきなのか。肥薩おれんじ鉄道の広報担当者に話を聞いた。
――肥薩おれんじ鉄道が運休を決めた理由は。
今年の2月1日にも、一部運休を実施しました。昨年度は退職者が重なって運転士不足になり、十分な運行本数を維持することが難しかったためです。
現在、弊社の運転士は4月1日時点で27名です。本来のダイヤで動かすためには37名必要で、つまり10名が不足しています。定年退職を見越して継続的な採用活動も行ってきたのですが、中堅、若手運転士の予期せぬ退職により、必要数が足りていない状況が続いていました。
それでも、何とか少ない人数でもやりくりしていたのですが、運転士一人にかかる負担も大きくなり、健康面への配慮も必要です。そういった複数の要因が重なり、このたび減便に至った次第です。お客様に負担をかけてしまうため、当社としては難しい判断だったのですが、安全輸送のためにご理解をいただければ……と思っております。
――今回の一部運休は、期間限定で行われるものなのか。
当面の間続く見込みです。運転士の数が確保できれば、すぐにでも本数を増やしたいのですが、ある程度の人数が揃わない限りは難しいのが現状です。今後、ダイヤを元に戻せるかどうかは、人数確保の状況次第となります。
――定年退職に関して言えば、ある程度先を見越して採用の計画を立てられたのではないか。
弊社の運転士には、JR九州さんからの出向者もいます。その方々が定年退職されることを見越して、採用活動は継続的に続けてきました。コロナ禍で大手の交通事業者が採用を中止、または縮小するなかでも、弊社は将来に備えて採用を継続してきました。
ところが、コロナ禍が明けてから、他の交通事業者で採用活動が本格的に再開しました。すると、競合が多くなる中、就職・転職希望者にとって比較対象が増え、他社への転職をしやすい背景もあったように思います。こうした事情のため、定年退職と転職がほぼ同時期に発生したのが、現在の運転士不足に陥った要因の一つだと考えています。
――採用は現在も行っているのか。
はい。今年度は運転士の採用が会社の最優先事項と言っていいほどで、強化し、注力している状況にあります。昨年、法改正により、鉄道の運転免許を取得できる年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられました。運転士はおおむね、1年数か月で乗務ができるようになりますので、当社としては、採用・養成体制を整え、高校生の採用を積極的に行い、人材の育成をしていきたいと考えています。
――肥薩おれんじ鉄道の事例がクローズアップされているが、人材不足に悩まされている交通事業者は全国的にも多い。
他社の関係者の話を聞くと、やはり同じ悩みを抱えていると言っていますし、鉄道会社だけでなく、バスやタクシーなどの交通事業者全体の問題と認識しています。近隣のバス会社にも減便を行っている事業者が見られます。
※以下引用先で
引用元: ・【鉄道】ローカル路線で深刻化するとにかく運転士が足りない問題 どうすれば地方の足を維持できるか [七波羅探題★]
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