・中国から引き合いが高まったことで、ウラル原油に価格競争力
中国の石油精製会社がロシア産原油の主力銘柄であるウラル原油の購入を加速させている。米国がインドによるロシア産原油購入を非難し、関税措置を強化していることから、インドが買い控えた割安な原油を中国が買い取っているもようだ。
ロシア産原油を最も多く輸入している中国は通常、ロシア極東地域からの原油を受け入れている。しかし、8月に入ってから、バルト海や黒海の港から積み出されるウラル原油の輸入量が日量7万5000バレル近くに達しており、年初来平均(約4万バレル)のほぼ2倍となっている。調査会社クプラーのデータが示した。
これに対し、インド向けのロシア産原油輸出は今月、日量40万バレル以下で、平均の118万バレルを大きく下回っている。
エナジー・アスペクツの孫佳楠アナリストは「全般的に見て、中国の製油所は当面、引き続きロシア産原油を受け入れられる余裕があるが、インドの製油所はそうではない」と指摘。ロシア西部から出荷されるウラル原油は、中東産の他の原油と比べても依然として競争力があるという。
影響力増大
トランプ米大統領は、ロシアがウクライナで始めた戦争を終わらせようと和平仲介を目指し、外交攻勢を強めている。そうした中で、世界の原油市場では取引動向の変化に注目が集まっている。
米政府はロシア産原油を購入しているインドへの制裁として、インドからの全輸入品に対する関税を倍に引き上げる方針。一方、中国とは通商上の対立を巡り休戦状態にあるため、そうした措置は取られていない。
リスタッド・エナジーの商品市場部門責任者ムケシュ・サーデフ氏は「一つ確かなのは、トランプ氏は自ら達成できないと分かっていることはやらないということだ」との考えを示し、「インドに圧力をかけることで成果を上げ、影響力を行使できるが、一方で、中国に圧力をかけたらどうだろう。恐らくうまくいかない」と話した。
匿名を条件に語ったトレーダーによると、中国の製油所からの引き合いが高まったことで、直近ではウラル原油について、現物の北海ブレント原油に対してバレル当たり1ドルのプレミアムが提示されており、追加の値引きは確認されていないという。
ブルームバーグがまとめた追跡データによれば、現在、中国沿岸にはそれぞれ100万バレルの積載能力を持つウラル原油を積んだタンカーが少なくとも2隻停泊中で、今後さらに到着する見通しだ。
サーデフ氏は余剰なロシア産原油は市場から除かれる必要があり、余剰分を受け入れられるのは中国だけだと述べ、「中国が購入しなければ、ロシア産原油は新たな買い手を確保するため、さらなる値引きを余儀なくされる可能性がある」と分析している。
ブルームバーグ 2025年8月21日 8:32
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-08-20/T18G1BGP493800
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