ステーブルコイン発行を手がけるJPYCは8月18日、資金決済法に基づく「資金移動業者」の登録を取得したと発表した。これにより、同社は日本円と1対1で価値が連動する「円建てステーブルコイン」の発行が国内で初めて可能となった。
JPYCが発行するステーブルコイン「JPYC」は、日本円に連動する資産として、その価値は銀行預金や日本国債によって100%保全される。つまり、JPYCをいつでも同額の日本円に交換できる。これは価格が大きく変動する暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)とは決定的に異なる。
発行されたJPYCは、利用者自身のウォレットやカストディ事業者(保管サービス)に預けることができる。さらに、ブロックチェーンを利用するため、世界中に数秒で送金可能だ。送金手数料(ガス代)は利用するチェーンによって異なるが、安いチェーンであれば1円未満で済むケースもあるという。現在はEthereum、Avalanche、Polygonの3チェーンに対応予定だ。
JPYC社は、日本円をJPYCに変える「発行」と、JPYCを日本円に変える「償還」を担う。その際の手数料は徴収しない。前述の通り、送金手数料はブロックチェーンのガス代のみとなり、客が店舗への支払いにJPYCを利用する場合、PayPayやクレジットカードで生じる決済手数料を節約できる。
(つづく)
引用元: ・PayPayに強力な対抗馬? 日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を金融庁が認可、今秋始動 [897196411]
>>1 つづき
■JPYC社はどうやって収益を得るのか
前述の通り「手数料ゼロ」が魅力のJPYCだが、同社はどうやって収益を上げるのだろうか。
その答えは次のとおりだ。ユーザーが日本円をJPYCに交換すると、JPYCはその資金を主に日本の短期国債の購入に充てる。つまり、JPYC社にはその金利収入が入ってくる。
米ドル連動ステーブルコイン「USDT」を発行するテザー社も同様に米国債を運用し、金利を収益源としている。日本は現状、短期金利が低水準だが、仮に1兆円規模のJPYCが発行されれば、0.5%の短期金利で年50億円程度の収益が見込める。今後インフレによって日本の短期金利が1%程度に上昇すれば、金利収入は倍増する。ステーブルコインの発行総額は世界的に拡大傾向にあり、それに比例した収益増も見込める。
JPYC代表の岡部典孝氏は「(先行する)米ドル連動ステーブルコイン発行体のテザーやサークルは米国債の主要な買い手になっている」とし、次のように述べた。
「日本でもこれからJPYCが日本国債を買いまくることになる。ステーブルコイン発行が伸びない国の国債金利はこれからどんどん上がっていく。日本国債の金利はJPYCの肩にかかっているといっても過言ではない。住宅ローンの金利が上がってほしくないサラリーマンや銀行融資の金利が上がってほしくない経営者や自営業の方はJPYCに注目してほしい」(岡部氏)
(つづく)
>>4 つづき
■JPYCとPayPayやSuicaとの違い
ユーザーが実際にステーブルコインとしてのJPYCを発行・償還できるサービスは、今秋から始まる予定だ。
一見すると「1JPYC=1円で使える」という点は「PayPay」や「Suica」といった電子マネーと変わらないように見える。では、ユーザー目線では何が違うのだろうか。
最大の違いは、JPYCがブロックチェーン上で自由に利用できる点だ。PayPayは、PayPayの加盟店やアプリでしか利用できないが、JPYCはウォレットや加盟店の枠を超え、ブロックチェーンを通じて世界中で取引できる。さらに、DeFi(分散型金融)と組み合わせれば、自動送金やスマートコントラクトによる高度な金融サービスも実現可能だ。
法的な位置づけにも違いがある。PayPayやクレジットカード会社などの「前払式支払手段発行業者」は、法律上「加盟店管理義務」を負っており、自社の決済手段を導入する店舗や事業者を審査・管理する必要がある。一方、JPYCのように資金移動業者として電子決済手段を発行する場合、この義務は課されない。そのため、従来の電子マネーやカード決済では導入が難しかった事業者やサービスでも、JPYCを利用できる可能性がある。
さらに、送金手数料がブロックチェーンの「ガス代」で済む点も大きい。岡部氏によれば「安価なチェーンを使えばガス代は1円未満で済む」といい、PayPayやクレジットカードに比べて「決済手数料」を大幅に抑えられる。加盟店手数料の高さが障壁となって普及が進みにくかった店舗でも、JPYCが突破口になり得る。ただし、加盟店をどのように増やしていくかは大きな課題だ。
マネーロンダリング対策も、今回の資金移動業者への登録で重視したポイントだという。岡部氏は「違法行為であれば我々もブロックする権利はある」と述べ、適切な監視と対応を強調した。
(つづく)
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