大阪・関西万博の開催に伴い、関西圏の貸し切りバスが不足し、一部で自治体行事が中止になるなどの影響が出ている。
来場者を万博会場へ運ぶシャトルバスの運行に、多くの運転手が動員されているためだ。(苅田円、福永健人)
■確保できず
兵庫県西宮市は、市内の小学4年生を対象に毎年7月に開催している音楽会を今年は中止した。
1956年に始まった恒例行事で、約4300人が参加する予定だったが、会場の市民会館から距離のある学校向けの貸し切りバス10台以上が確保できなかったという。
市教育委員会によると、毎年依頼しているバス会社など複数社に問い合わせたが、「万博にドライバーを回さないといけない」などと説明があったという。
参加予定だった女子児童(10)は「『4年生になったら音楽会だ』と楽しみにしていたのに、すごく残念。来年でもいいのでやってほしい」と話した。
大阪府交野市の調査では、全市立小中学校12校が今年度に予定していた遠足や修学旅行で、バスを使う11校のうち半数超の6校はバスを確保できたが、5校はできなかった。
5校のうち2校は旅行会社から「万博の影響」と言われたといい、徒歩で行ける近隣に行き先を変更するなどした。
大阪市内でも5~6月、中学校や認定こども園でバスが確保できず、宿泊行事の中止や遠足の行き先変更が生じた。いずれもバス会社などから、万博の開催が影響していると説明があったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3851542039096023ddffe494aa856a008967d6ed
引用元: ・万博シャトルに運転手動員で貸し切りバス不足…遠足や修学旅行、音楽会中止など行事に影響 [567637504]
■2024年問題
背景には、昨年4月からバス運転手らの時間外労働の上限規制が適用され、人手不足が深刻化している「2024年問題」がある。
日本バス協会(東京)が23年9月に実施した試算では全国のバス事業者が22年度と同じ輸送規模を維持するには、30年度に3万6000人が不足するという。
日本国際博覧会協会(万博協会)は、会場とJR桜島駅や新大阪駅などを結ぶシャトルバスの運行を、大阪シティバスや西日本ジェイアールバスなど関西中心の15社に委託・要請している。
マイカーで駐車場に止め、シャトルバスに乗り換える「パークアンドライド」も含めて往路便で1日最大約1000便が運行され、開幕から3か月での1日平均乗客数は2万2000人だった。
大阪シティバスは昨年4月から万博閉幕まで、遠足などの学校行事や企業の社員研修といった貸し切りバスの依頼を断っている。担当者は「万博の輸送に手いっぱいで、予約を受ける余裕はない」と話す。
西日本ジェイアールバスは万博会期中、貸し切りバスの受注件数を例年の3割に減らしている。「万博のシャトルバス運行のため、どうしても受けられる数に限りがある」という。
■全国で募集も
万博協会は、万博のシャトルバス運行を担う関西のバス会社の負担を減らすため、全国のバス会社に運転手の出向を依頼。昨年9月時点では、
目標の100人を超す109人を42社から集めるメドがついたと発表していたが、キャンセルが相次ぎ、今年3月時点では16社の71人に減った。
足りない人手は、大阪シティバス側が広島や福岡などで説明会を開いて採用した運転手らで賄ったという。
万博協会の淡中泰雄・交通部長は「行事の中止や変更が起きていることは残念だが、地域への影響には十分配慮してきた」と説明する。
桜美林大の戸崎肇教授(交通政策)は
「運転手不足は全国的に解決しなければならない問題だ。ただ、万博は開催までの準備期間があったのだから、
万博協会は自治体やバス会社などと万博による影響についての具体的な情報を共有し、対策を検討する場を早期に設けるべきだったのではないか」
と指摘している。
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