■概要
2025年6月28日から施行された中国民用航空局の新規制により、3C認証を取得していないモバイルバッテリーの航空機内持ち込みが全面禁止となっています。
2024年から2025年にかけて、中国の主要モバイルバッテリーメーカーである Anker、ROMOSS、Baseusが自主的な大規模リコールを発表しました。 リコール対象製品の合計は200万台を超え、業界最大級のリコール規模です。メーカー名 リコール台数 対象製品 発表時期
Anker 約710,000台 PowerCoreシリーズの一部 2024年下旬
ROMOSS .約490,000台 Senseシリーズ等 2025年初頭
Baseus .非公表(推定約80万台) 自社EC経由製品 2025年春頃
■原因と供給元
問題の多くは、 安普瑞斯(無錫)有限公司(旧Amprius Wuxi、現Apex)が供給した リチウムイオンバッテリーセル 「126280」 に起因しています。
同社は米国Amprius Technologiesの旧中国拠点で、現在は独立企業として無錫を拠点に運営されています。
リコールの主因はいずれも「発火・発煙リスク」とされ、特定のバッテリーセルの品質不良が問題の中心と見られています。
中国語表記:安普瑞斯(無錫)有限公司
旧名:Amprius(Wuxi)Co., Ltd.
現名:Apex (Wuxi) Co., Ltd. として独立運営中
本来は米国Amprius Technologies, Inc.の子会社でしたが、2022年に中国で独立運営へ移行
モバイルバッテリー向け小型セル(126280型など)をOEM供給
https://www.ieee802.co.jp/theme/kei/img/whitepaper/126280.jpg
形式:126280
種類:リチウムポリマー電池(Li-Po)
公称容量:約10,000mAh
公称電圧:3.85V
寸法:12mm × 62mm × 80mm

引用元: ・※中国主要モバイルバッテリーメーカーによる前例のない大規模リコールの背景 [279771991]
Amprius / Apex 社製品の一部ロットで内部短絡や電解液の漏洩が発生し、膨張・発煙・発火のリスクがあると報告されています。
3C認証済みにもかかわらず、実際には製造工程上の不備があった可能性が指摘されています。
高価格帯の製品でも同様の問題が発生していることは、業界全体の品質管理体制に根本的な課題があることを示唆しています。
同社は多くの大手モバイルバッテリーブランドのセルサプライヤーとして重要な位置を占めていましたが、その3C認証が「工場監督検査不合格」を理由に全て停止される事態となりました。
これは単なる性能不良ではなく、ユーザーの生命に関わる重大な欠陥であり製造物責任法違反といえます。
さらに大きな問題点は、日本に輸入されている、すでに販売済みの製品の責任の所在です。
多くは家電量販やECでの販売が占めますが、その販売責任が問われる事態は避けられません。
■3C認証とは
3C認証(中国強制製品認証制度 / CCC)は、中国国内で販売される製品に義務づけられている 安全・品質保証制度で、日本のPSE、欧州のCEマークに相当します。
電子機器や電池、ACアダプタなどはこの認証なしでは正規販売できません。
今回問題となった製品は3C認証済みであったにもかかわらず、製造ロットの品質にばらつきがあったことから、認証制度の運用や検査体制の限界も問われています。
中国Amprius / Apex 社が持つ11件の「3C認証」が今月10日以降、すべて停止されており、その理由は「工場の監査に重大な不備があり、製品の一貫性に問題があるため」とされています。
同社が取得していたISO9001、ISO14001、OHSAS18001といった認証も21日時点で停止されています。■影響と今後の課題
消費者の安全意識が高まっており、各国で輸入規制や認証制度の見直しが検討されています。メーカーは今後、より厳格な トレーサビリティ体制、セル選定基準、製品検査の強化が求められます。
業界・消費者への影響
・消費者の安全意識が急速に高まっており、大手モバイルバッテリーブランドに対する信頼が揺らいでいます。
・一部国・地域では、輸入規制や認証制度の見直しが始まっています。
・日本国内でも、同等型番のバッテリーを採用した製品の安全性確認を急ぐ動きが見られています。
■今後の展望と課題
・品質管理の強化と製造元の透明性確保が業界全体の急務となります。
・メーカー各社はより厳格なセル選定基準やトレーサビリティの導入を進めています。
・日本市場においても、PSEマークの強化検討や、リチウム電池の輸入時検査の厳格化が予想されます。
■結論
今回の大規模リコールは、表面的な安全認証ではなく、実際の製造品質管理と流通後の安全監視体制の重要性を改めて浮き彫りにしました。ユーザーにとって「安全なバッテリー製品」とは何か、メーカー・規制当局・流通業者のすべてが見直しを迫られる局面に来ています。
いいことじゃん
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