結果は11頭中10着。しかし、ハイライトはレース後に待っていた。手綱を取る武騎手に導かれ、ハルウララがスタンド前をゆっくりと走る。通常、勝った馬が行うウィニングランに割れんばかりの拍手が送られた。
「なんか夢みたいだ」。場内実況を担当したアナウンサー・橋口浩二さん(58)=同37歳=は胸が熱くなった。ブームの仕掛け人とはいえ、1年前、ここまでの光景が見られるとは夢にも思わなかった。(北海道支社 野田快)
(中略)
●時代が人気押上げ「負け組の星」
(中略)
引退後、栃木県や北海道の牧場を転々としたハルウララ。12年12月、初めて牧場に来た時は生来の臆病さもあって人間との距離を縮めるには時間がかかるように思われた。だが、その半年後、宮原さんが馬房の掃除をしていると、視線を感じた。ぱっと振り向くと、こっちを見ているハルウララと目が合った。「かわいいところ、あるじゃん」。距離は縮まりつつあった。
馬主からの月8万円ほどの預託料支払いが滞るようになったのは、ちょうどこの頃だ。預託牧場は馬主から馬を預かり、預託料でエサ代やけがの治療費をまかなう。預託料が支払われなければ、馬の面倒はみられない。宮原さんは決断を迫られた。
あのかわいい視線が脳裏をよぎる。それに――。「人間の都合で人気馬に仕立て上げられたのがウララ。そんな彼女をまた人間の都合で手放してしまうのか」。宮原さんは腹をくくった。
14年、「春うららの会」を設立。ネットを通じて1口3000円で支援を募ると、「元気でよかった」と泣きながら電話してくる人もいた。3か月で80人の会員が集まり、その会費で預託にかかる費用をまかなえるようになった。
ハルウララは今年2月で29歳になった。人間なら80歳を優に超えるとされる。朝ごはんを食べて、ひなたぼっこして、お昼を食べたら昼寝して。マーサファームで過ごす余生は悠々自適そのものだ。勝利実績のある馬も、引退後は乗馬や繁殖馬などに転じることが多く、ハルウララのような余生を送るケースは一部にすぎない。「ウララはある意味、勝ち組ですよ」。そう笑う宮原さんの横を、ハルウララがのんびりと歩いていた。
読売新聞 2025/06/16
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef085fc95dd99c94ad4d62fe60ec60eb97ec369b?page=4
引用元: ・【競馬】ハルウララ29歳のいま、悠々自適の余生は「勝ち組」 [おっさん友の会★]
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