コメ農家の目線で見ても、備蓄米の入札は理解できなかったという。登山情報誌の編集長を務める木村和也氏は米どころとして知られる新潟県の出身。そして異色の“兼業農家”でもある。
東京農工大学大学院の博士課程を中退すると、登山専門誌「山と溪谷」や、アウトドアや旅をテーマにした書籍で知られる出版社、山と溪谷社に入社した。
2010年にアウトドア企業の起業に携わり、生まれ育った新潟県南魚沼市にUターン。実家のコメ農家を継ぎ、山登りのフリーペーパー「山歩みち」の編集長も務めている。
5キロ2000円台の備蓄米が店頭に並んでも、それは一時的なもので終わる可能性があると木村氏は指摘する。
「ここ数年、コメの需要は約700万トンなのに対し、供給は680万トンに押さえつけられてきました。つまり需要と供給のバランスが壊れてしまったのです。
ところが備蓄米の総量は、もともと100万トン。第1回と第2回の放出は30万トンでしたから、残りは70万トンに過ぎません。消費者が2000円台のコメに殺到すればあっという間になくなり、再び5キロ5000円台の高値に戻ってしまう可能性も否定できないのです」
木村氏は「ちなみに5キロ2000円台のコメ、これは21年産等のいわゆる古米です」と言う。
「これらのコメはもちろん食べられるとはいえ、これまでその多くは飼料用として国は処理してきたコメです。飼料用としていくらで卸したかはわかりませんが、先の入札事例といい、ここでもまた政府は儲けたいのか、と下衆の勘ぐりをしたくもなります。それはさておき、コメの価格が本当に下がるためには今後数年間、大豊作が続く必要があるでしょう。もし小泉農相が本気でコメの価格を下げたいのなら、カルフォルニア米を含む外国産米の流通量を増やすほうが手っ取り早いと思います。関税を下げる手もあるかもしれません。ただし、離農者がさらに増えるという国家的な損失を覚悟する必要があります」
税金や社会保障費の負担に悲鳴を上げる消費者は多い。そこにコメ価格の高騰が追い打ちをかけた。一方、コメ農家もコメ価格の低迷に長年、苦しんできた。
石破茂首相は5月21日の党首討論で「コメの価格は5キロ3000円台にならなければならない」と発言した。
コメ5キロで3000円が農家に直接入るように制度設計を改めても、当たり前だがコメは農作物だ。工業製品とは異なり、不作の年もある。
「今回のコメ高騰で、価格が上昇しても農家に恩恵はほぼないことを改めて実感させられました。巷ではJA悪玉論が盛んですが、彼らが業者に卸す際は2割しかマージンを乗せていませんし、日々の細かい営農指導を考慮すれば、農家にとってはむしろ良心的だと言えます。ところが、南魚沼産コシヒカリだけを見ても、小売の段階ではその末端価格がJA買い取り価格に対して倍に跳ね上がっているのです。もし農家の収入を確保し、消費者の求める“適正価格”で販売するのだとしたら、やはり税金で農家の収入を補償するしかないでしょう。ただし、それでも現状維持にしかならないという点は強調させてほしいと思います」(同・木村氏)
豊作でも不作でも農家には常に一定の収入が入るよう国が税金を使って調整する。この制度を実施すれば、ひょっとすると離農は減るかもしれない。だが……。
「しかし後継者不足を解決できるほどのインパクトはありません。極論にはなりますが、私は以前から農業従事者は“国家公務員”にすべきだと主張してきました。私たち農家は農作物を作ることで食の安全保障に寄与しています。土地と景観を守り、水田はため池の機能も果たすので国土の保水にも役立っています。農業もまた、日本を守り、公共に奉仕する仕事だと言えるのではないでしょうか」(同・木村氏)
木村氏は「長期的な視点に立てば、日本の食糧自給率を上げることと、新たに農業に参入する人を増やすことが最大の課題になると思います」と言う。
「もしコメ農家の身分が国家公務員になれば、生活は安定しますから就農者が増える可能性がある。公務員ですから目先の利益を追い求めず、質の高いコメ生産を目指すこともできるでしょう。結婚や出産、引退後の年金生活といった人生の節目でも、公務員という地位は有利に働くと思います。若い人たちにも魅力的な仕事だと考えてもらえるかもしれません」
引用元: ・【異色の兼業農家が備蓄米の放出効果は限定的と警鐘】「需要と供給のバランスが壊れてしまった、コメの価格が本当に下がるためには今後数年間、大豊作が続く必要がある」
問題ない
非効率な農業はマニア向けで良い
高い米はノーセンキューが今回の備蓄米の売れ方見たら分かった事
気象悪化を唱える研究グループもある
作付面積を増やしてカバーしないと無理だろ
減反政策のツケはデカいな。
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