■消耗戦になれば必ず勝てると踏んでいたが、膠着状態を突破できず「戦略的袋小路」に。ウクライナの粘り勝ちがついに実現?
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は負けを認める屈辱を巧みに避けてきた。
初めて政権を握ったのは第2次チェチェン紛争の最中の2000年。プーチン指揮下でロシア軍はどうにかチェチェンの分離独立派を抑え込めた。【マイケル・キメージ(ウィルソンセンター・ケナン研究所所長)】
その後もジョージア(08年の南オセチア紛争)、ウクライナ(14年のクリミア半島の一方的併合と22年の本格的な侵攻開始)、
シリア(15年のロシア軍の介入)でプーチンは軍事力に物言わせてきた。
だが長期的な成功は達成できていない。ジョージアの将来は不透明だし、シリアでロシアの影響力は低下した。
※略
とはいえウクライナはシリアやジョージアとは事情が違う。
シリアは遠いよその国だから、そこで自国の影響力が低下してもロシア人はあまり気にしない。
ジョージアがロシアと西側のどちらにつくかは読めないが、それもプーチンの重大な失点にはならない。
それとは異なりウクライナではロシア軍が足止めを食らい、死傷者が増え続けている。
プーチンが何らかの形で負けを認めて譲歩しないと、この状況は打開できそうにない。
クレムリンが行う戦況報告では、この戦争の悲惨さを隠すことは可能でも、プーチンは国内経済の衰退を隠せない。
※略
ロシアはまだバッタリ倒れるまでには至っていないが、弱体化は確実に進み、「まさかの敗北」を喫する中国リオが現実味を帯びつつある。
長期戦に必要なのは総合的な国力だ。軍事目的の達成を支えるのは外交力と経済力であり、それらを支えるのは政治的な意思である。
今のロシアにはこれら全てが欠けている。
※略
今のロシアは2つの深刻な軍事的ジレンマに直面している。
1つは戦況を動かせないこと。ロシア軍はウクライナで支配地域をじりじりと広げているから、ロシア軍のほうが勢いがあるように見えるが、その勢いは何の役にも立っていない。
その証拠にロシアはウクライナ東部の都市ポクロフスク攻略で苦戦を強いられ、多大な犠牲を出している。
※略
今年に入ってからだけでも10万人の死傷者が出た。
このペースでいくと、年末までに死傷者は100万人に上りそうだ。
それだけの人的損害を出しても、侵攻開始時と比べ、ロシアの戦略的状況は全く改善されていない。
ロシアのもう1つのジレンマはウクライナそれ自体だ。
侵攻開始時の奇襲作戦が失敗した時点で、プーチンは二者択一を迫られた。
侵攻規模を縮小するか、ウクライナ全土で民間人を標的にするか。
やすやすと引き下がったと見られるのを恐れてプーチンは後者を選んだが、この選択が裏目に出た。
ロシアの猛攻はウクライナを奮い立たせた。
命を賭しても祖国を守ろうと、人々は心に誓った。
ウクライナはロシアよりも貧しい小国で、消耗戦では不利になる。
しかも外国は物資を援助しても援軍は派遣しない。どう見ても勝ち目は薄いが、圧倒的な強みがある。
ウクライナ人の士気の高さとドローン(無人機)の活用に見られるような創意工夫の才だ。
祖国防衛の熱意がこうした工夫を生み出すのだろう。
※略
ウクライナでの敗北を何としても回避したいプーチンは、国家経済を犠牲にすることもいとわない。
ロシアが「戦争景気」に沸いた時期はもはや過去。
開戦時に5%だったGDP成長率は今やゼロ近くに落ち込み、人手不足で人件費が上がったせいでインフレ率は10%前後に上っている。
トランプが始めた貿易戦争と中国経済の低迷のせいでエネルギー価格が下がったことも、ロシアの国家予算を圧迫している。
国民はまだ飢えてはいないが、物価高と経済の先行き不安からプーチンの戦争に疑問を抱いてもおかしくない。
何しろそれは一向に勝てない、非生産的で不必要な戦争なのだから。
政治指導者が侵略戦争を仕掛けることは危険な賭けだが、その戦争で敗色が濃くなれば危険性は一段と増す。
※略
実質的な権限を一手に握る独裁者になることは非常に危うい立場に置かれることでもある。
戦争に勝てばいいが、敗北は政治的な命取りになる。
そのためかもしれないが、後継者問題では長年だんまりを決め込んでいたプーチンが最近それを口にし始めた。彼も気付いているのだろう。
愚かな戦争に自分の政治生命を賭けた挙げ句、その戦争に負けつつあることを……。
引用元: ・「まさかの敗北」 ロシアの消耗とプーチンの誤算 「戦争景気」はもはや過去 経済の衰退を隠せず ウクライナの粘り勝ちがついに実現? [ごまカンパチ★]
国境際で演習してればよかったのに
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