「チェキ撮影会でも、『一番好きなのは○○さん』と恋愛感情を匂わせることはありました。それが、配信で二人きりの通話ができるようになってからは、さらに大胆な色恋営業を仕掛けるようになった。
ときにはファンを彼氏のように扱い、『家賃を払ってほしい』とか『ブランド品を買うおカネが欲しい』と言って投げ銭を要求するんです。
地下アイドルにハマる男性の多くは、恋愛経験がないような中高年。はたから見たら嘘だと分かる言葉でも簡単に騙されてしまいます。たった30分の会話の間に、何十万円も払ってしまう人もいました」
こうしてファンはアイドルにどっぷりとハマり、冒頭の場面のようにライブや撮影会でも多額のカネをおとすようになるというわけだ。
ファンの恋愛感情を巧みに利用し、特別な存在なのだと錯覚させる―そのために、地下アイドル業界には絶対的なルールもある。
「彼氏がいることがファンにバレるのは、NGです。特にファンとの交際はタブー中のタブー。地下アイドルがファンの男性と交遊することは「つながり」と呼ばれる。
アイドルがファンと個別にSNSでやり取りしていただけでつながりと見なされ、規約違反となり解雇されるケースもあります。
なかには、実の父親と外出しただけなのに、ファンからパパ活を疑われ、父親だと弁明しても批判は止まず、アイドル人生が終わった子もいます」(前出・Sさん)
自分以外に特定の相手がいるとバレた瞬間、ファンの「恋」は憎しみに変わる。
「夢から覚めたファンは、貢いできた分を返せと逆上します。ライブの時に、マネージャーの私に直接文句を言ってくる人や『殺してやる』と怒鳴る人もいました」(前出・土屋氏)
自分の身に危険が及ぶ可能性があるのにもかかわらず、なぜ地下アイドルたちは色恋営業に必死になるのか。それは、ライブやチェキ撮影だけでは食べていけないからだ。
’21年10月まで地下アイドルとして活動し、現在は男女6人組ユニット「アイドル失格」のメンバー兼プロデューサーのえんじてゃ氏が、当時を振り返る。
「地下アイドルには固定給はないことが一般的で、ライブ後のチェキ撮影が主な収入源です。ライブは月20回くらい行われますが、3万~6万円しか稼げません。
ほとんどの地下アイドルは、固定ファンが1~2人くらいしかいない。色恋営業してでもファンになってもらい、投げ銭をしてもらわないとグループ内の立場もなくなってしまうんです」
なぜこれほどまで稼げないのか。その背景には、運営事務所による搾取構造がある。えんじてゃ氏が続ける。
「多くの地下アイドル事務所が薄利多売の戦略を取っていて、抱えている全てのグループを売り伸ばす気はさらさらありません。
とにかく大量のグループを作り、個々のグループのファン数は少なくても、全体で見て集客できればいいという発想です。
また、ライブのチケット代すべてとチェキ代の半分以上を事務所が持っていくので、アイドルにはほとんど残りません。
グループのプロモーションは行わず、アイドルを使い捨ての商品のように扱うので、稼げるものも稼げない。交通費や衣装代、ダンスや歌のレッスン代まで自己負担が一般的で、月末の収支はマイナスが当たり前のアイドルも少なくありません」
事務所の運営は、業界を知らない、素人が行うことも少なくない。そのせいで、労働環境そのものに問題があることもしばしばだ。
今年、地下アイドル事務所を解雇されたある女性は、こう不満を吐露する。
「2年間分の撮影代と1ヵ月分の給料が未払いのまま、一般の男性と遊びに行ったことが見つかってしまい、これが「つながり」と見なされて解雇されました。
事務所との契約時に、アイドル側に問題があって解雇になった場合、未払いの給料は支払わなくていいという取り決めが知らない内にされていたので、結局、給料はもらえませんでした。
給料もよくない上に、未払いも当たり前。そんな事務所にいて、ルールを守るほうがおかしい。ファンには悪いですが、四の五の言ってられない事情があるんです」
引用元: ・【地下アイドルの闇】恋愛感情を匂わせ、何十万円も搾り取る 「色恋営業」
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