https://news.yahoo.co.jp/articles/09c8fa7f94c699258e4a3ac45dc173296ece563a
「M7.7の大地震が発生したが、わが国ではどの建物も無事で済んだ。たった一つの例外を除いてだ!」
3月30日、タイのペートンタン・中国ワット首相は、彼女が強調した「たった一つの例外」の現場視察を行った後、怒りに満ちた表情で述べた。
引用元: ・「ミャンマー地震で倒壊したタイの唯一のビル」を手掛けた中国企業は一帯一路の中核企業だった [662593167]
■ ミャンマーの被害は報道してもタイの「人災」には触れない中国メディア
中国でも、ミャンマーで大地震が発生したことは、連日伝えている。隣国で起こった「天災」だけに、マンダレーに取材チームを派遣したりして、むしろ日本での報道よりも多いくらいだ。
ところが、隣国タイで起こった「人災」については、中国では沈黙したままなのである。事故発生時にはいくつかの記事が出たが、たちまち削除されてしまった。「中鉄十局」は、自社のホームページまで閉鎖してしまった。
中国で削除された記事の一つが、3月28日に『鳳凰ネット』が報じた「バンコクで震災で倒壊したビルは中鉄十局と、別のタイ企業がジョイントで請け負ったタイ会計検査院ビルだった」というタイトルの記事である。その大意は以下の通りだ。
〈タイのメディア『タイPBS』は本日報じたところによれば、タイ会計検査院の副院長兼報道官のSutthipong Boonnithi氏はこう述べた。ミャンマーでの7.9クラスの地震(タイ気象台は8.2クラスと発表)により、バンコクのChatuchak地区にある会計検査院は、いままさに新しいビルを建設中だったが、すべて倒壊した。現在、プロジェクトの3割が完成していた。Sutthipongは事故後、すぐに現場を視察し、損失状況を調査した。
この新たなオフィスビルは30階建ての高層建築で、総建設予算は21.36億バーツ(約94億円)。2020年に着工し、その後、新型コロナウイルスの影響で一時停止した。プロジェクトは、中国中鉄十局(タイ)とイタリアのITD-CRECがジョイントで請け負っていた〉
中鉄十局は、中国中鉄傘下の国有企業で、従業員約1万4000人。22の子会社を持ち、2023年の売上高は684億元(約1.4兆円)に上る。
同社は、中国でインフラ整備を担当する典型的な国有企業で、同社の「就職案内」では、こう誇っている。「わが社は中国全土の鉄道幹線の20分の1、高速道路と地下鉄と高架列車の40分の1、トンネルの50分の1、それに1000棟以上の高層建築の建築を担ってきた全国優秀施工企業である」。
特筆すべきは、この会社が、習近平主席が2013年に唱えた中国とヨーロッパを結ぶ広域経済構想「一帯一路」の中核を担ってきたことだ。すでにベラルーシ、ベネズエラ、南スーダン、ウガンダ、ケニア、スリランカなどで、インフラ整備のプロジェクトを行ってきた。
■ 中国共産党と表裏一体
今年の春節明けの2月12日には、本社がある済南で「2025年海外システム活動会議」を開き、朱衛東董事長(会長)は、こう強調した。
「海外に引き続き強固な『根拠地』を建設し、率先して強大で優秀な多国籍企業となるのだ。海外のリスクをうまくコントロールし、法規に基づいた経営理念をしっかり樹立するのだ。
一貫して海外の中国共産党の建設活動を深化させ、『海外事業において絶対に中国共産党の指導とグループ会社の監督管理から乖離(かいり)しない』ことをしっかり把握するのだ。全面的な中国共産党の厳格な統治を推進し、中国共産党の活動スタイルを展開し、海外に(社の)ブランドの伝播を積極的に行っていくのだ」
このように、「中国共産党の建設活動」と「中国共産党の統治」を前面に掲げて、海外事業を展開している会社なのだ。
中鉄十局はタイでも、今回問題になったタイ会計検査院ビルの他に、両国間の重要なプロジェクトを担当している。それは、中国とタイを結ぶ鉄道建設の一期工事だ。2023年7月19日に、タイのアティララタシ交通大臣代行、ニルマニバン鉄道局長、韓大使らが列席して、盛大な調印式を行っている。
この鉄道工事は、来年竣工し、2029年に始動する予定だ。開通すれば、中国―ラオス―タイが鉄路で結ばれ、「一帯一路」に花を添えることになる。
だが、今回の会計検査院ビル倒壊を見て、私は「一帯一路」よりも、一昔前に中国で流行った言葉を思い起こした。「豆腐渣工程」(トウフジャーコンチェン)。直訳すると「おから工事」、すなわち「豆腐のようなすぐ倒れる手抜き工事」である。
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