https://news.yahoo.co.jp/articles/48c03d055b25a3052a9c84fa654ba1104f45b098
中国政府が5000億元(約10兆円)の国債を発行し、国有大手銀行に公的資金を注入する。住宅価格は下落基調でデフレ圧力が強い中、不動産バブルの後始末を本格化させる。ただし、公式統計では不良債権残高は約3兆元(約60兆円)だが、実態は統計以上と推計され、国際機関は、「中国の隠れ債務は60兆元(約1200兆円)に達する」と推計。今回の規模は十分とは言い難い。日本も「失われた30年」を経験したが、本格的な景気回復に欠かせない要素は何か。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
引用元: ・中国経済に漂う「不吉な既視感」物足りない景気刺激策が拍車をかける中国版「失われた30年」の現実味 [662593167]
● 中国が約10兆円の国債で公的資金注入へ
中国の全国人民代表大会(全人代、わが国の国会に相当)で、李強首相が「本年の実質GDP(国内総生産)成長率目標を5%前後」と明言した。また、政府は5000億元(約10兆円)の国債を発行し、国有大手銀行に公的資金(資本)を注入する。
中国政府はようやく、公的資金を使って不動産関係の不良債権処理に着手し始めるようだ。それに伴い、3月5日の発表後、香港株式市場では不動産株が上昇した。
今後、注視すべきは、中国経済の本格的な回復が進むかである。不良債権処理が進めば、経済が成長軌道に回帰する可能性はあるだろう。ただ、中国の不動産価格は依然として下落基調が続いているのが気がかりだ。不良債権の処理には時間がかかるだろう。2月の中国の消費者物価指数は前年同月比0.7%下落し、デフレ圧力は高まっている。
また、米国との貿易摩擦や、地方政府の財政悪化、自動車や鉄鋼に代表される過剰供給問題は簡単に解決できるものではない。人口減少や少子高齢化も、経済の重荷になる。AI(人工知能)分野など、明るい材料もあり一部投資家が中国株式への投資を再開する動きはあるものの、中国経済が本格的な回復するかはまだ不透明だ。
● 輸出頼みから内需拡大に舵を切った中国
3月5日に開幕した全人代において李強首相は経済を振り返り、2024年の目標(5%前後の経済成長率)を達成した要因として、貿易(純輸出)が増加し世界市場で中国企業のシェアが伸びたからと強調した。
一方で、足元の課題にも言及。米トランプ政権の対中制裁や関税引き上げを念頭に、多国間の貿易体制が困難になりつつあること、中国国内で個人消費は落ち込んでおり、景気回復の足取りは不安定との見解を示した。国民が就職難や収入の減少に直面していることにも触れた。
今後は、輸出の増加による外需頼みから、個人消費を中心に内需拡大を重視する方針に転換する。李首相は内需拡大の実現のため、対GDP比の財政赤字を前年から1ポイント引き上げて4%前後にするとした。財政赤字は1兆6000億元増加の、5兆6600億元(113兆円)にする。
また、期間10年超の超長期特別国債の発行を3000億元増やし、1兆3000億元(約26兆円)発行する。さらに、特別国債を5000億元(約10兆円)発行して、国有大手銀行に公的資金を注入する。地方政府の債券発行枠も拡大し、主にマンション在庫の買い取り件数を増やす。
政治活動報告におけるキーワードの登場数を見ると、「改革」「市場」「消費」が昨年に比べて増加している。3月6日には、中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁が、適切な金融緩和を実施し内需の下支えに取り組む姿勢を示した。
一方、米国ではスコット・ベッセント財務長官が、「中国は国家政策として過剰供給を増やし、安価な製品を海外に輸出している」と非難した。ベッセント氏は、中国の経済運営は自由資本主義に基づく米国とは相いれないもので、対中関税政策は中国に対抗するため重要な手段との認識だ。
● 不動産バブルの後処理が少しずつ進む可能性
今回の国有大手行への公的資金注入は、中国政府が不動産バブルの後始末を重視し始めたことを示している。公的資金注入の狙いは、これまでの金融行政指針と併せて考える必要があるだろう。
振り返れば23年11月、中国政府は国内の銀行に、民間企業向けの融資目標を設定するよう指示した。従来、中国では相対的に信用力が高い国有、国営、政府系企業向け融資を優先する銀行が多かったとみられる。バブル崩壊により銀行の利ザヤは低下し、民間企業への融資はいっそう伸び悩んだ。
そうした事態の打開を目指し、政府は融資の審査を担当する銀行員の免責条項を設け、中小企業向け融資に消極的にならないようにした。銀行の支店、行員の評価項目として、民間企業向けのビジネス実績を重視する方針も出した。
それでも昨年、月次発表の新規の人民元融資は伸び悩んだ。今なお、住宅価格も下落基調を脱していない。こうした事態に伴い、デフレ圧力は追加的に高まっている。つまり中国は、1990年代以降のわが国が経験した厳しい景気をたどる可能性が高いのだ。
今回、中国政府は10兆円の公的資金を国有大手銀行に注入し、不良債権処理に備える考えを示した。それは、不動産バブルの後始末を促す効果がある。過去のピーク時、中国の不動産関連需要はGDPの29%程度を占めたとの試算もあるが、バブル崩壊により不動産投資で経済を成長させることは難しくなった。
内需主導で中国の景気が回復するためには、中小企業の資金繰りを支援し、労働市場を安定化させることも必要だ。そこで中国政府は、まず国有大手行への公的資金注入を行い、民間向けの新規融資を伸ばし、民間向けの信用創造を促進する方針だ。
● 公的資金注入で景気は本格的に上向くか
今後は、国有大手行への公的資金注入がどれほどの効果を発揮するかを注視したい。実際に、民間企業向け融資が増えれば、労働市場は安定化するだろう。そうなれば、消費者の節約志向を和らげ、デフレ圧力を低下させることが期待できる。
全人代では、量子計算技術やAI、次世代の高速通信システム(6G)、半導体などの先端分野を対象に産業補助金を拡充し、人材教育を強化する方針を示した。公的資金注入で銀行のリスク許容度が回復し、成長期待の高い分野に資金が再配分されると景気回復への期は高まる。
ただ、不良債権の実態は統計以上に大きいとみられる。不動産分野だけで、不良債権残高は1兆ドル(約150兆円)を超えるとの試算もある。24年に中国政府は10兆元(約200兆円)の「隠れ債務」を、地方政府の管理下に置いた。しかし、IMF(国際通貨基金)は、「中国の隠れ債務は60兆元(約1200兆円)に達する」と推計している。今回の公的資金注入は内需拡大に必要な方策の一つであることは間違いないが、その規模は十分とは言い難い。
これまでの教訓として、大規模なバブルが崩壊すると、不良債権処理に加えて構造改革の重要性が高まることが挙げられる。規制緩和を推進し、成長が期待できる産業を育成することが、本格的な景気回復に欠かせない。わが国経済は不良債権処理と構造改革の両方が遅れ、「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥った。
「人民元を基軸通貨にする」
その為にはアメリカの覇権を切り崩せる事を証明しなければならない
これが台湾有事が確実視されている理由
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