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2025/03/06 05:00
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「集落がバラバラになるぐらいなら、元の場所に再建したかった」
宮城県石巻市の牡鹿半島の山腹にある「佐須団地」へ移って8年となる漁師の須田正太郎さん(73)は悔やんだ。眼下の海岸沿いに60年近く暮らしていたが、集落ごと津波にのまれ、妻(73)とともに高台での再建を余儀なくされた。
佐須団地は防災集団移転促進事業を活用し高台の山林を削って造成。事業は2012年に始まり、同じ集落の23世帯が移転を希望していたものの、硬い岩盤で工事が難航した。時間を要したことで別の場所に土地を見つけたり、高齢を理由に再建自体をあきらめたりする住民もいて、17年の完成時に入居したのは須田さんら2世帯だけだった。
宮城県は当初、リアス式海岸に点在する集落や漁港を、新たに団地を造成して集約しようと計画した。将来の人口減少も見据えた選択だったが、廃港や漁業権の問題、集落間の関係が複雑に絡んだ。住民や水産関係者から「漁港と漁村は一体だ」「あの集落とは一緒になれない」といった強い反発を受けた。
当時県土木部次長として事業を主導した元副知事の遠藤信哉さん(68)は「将来的に行政サービスを落とさない唯一の手段が集約だと考えたが、想定以上の拒否反応だった」と振り返る。
県全体で59団地を見込んだが計画を変更し、多くの要求をのんで漁港ごとに団地を造成することを決めた。結果として3倍超の192団地に膨れ、計4794戸を整備した。
県が全額国費による整備を要望すると、国も容認した。対象となった自治体の元幹部は「少しでも負担を求められたら、あれだけの事業はできなかった」と言う。自らの懐が痛まないことが、大規模造成に走らせたことは否めない。遠藤さんは「集落ごとに形態や文化が異なるのを読み切れなかった。住民と話し合う時間も不足していた」と語る。
読売新聞が、防災集団移転促進事業で民間宅地を整備した岩手、宮城、福島3県全25市町村の計328団地を調べたところ、7686戸が造成され、総事業費は2825億円に上った。1団地あたりの工期は平均32か月、1戸あたりの事業費は平均3675万円だった。福島、岩手と比較し、地形的事情から山を切り開く大規模造成が多い宮城は工期が40か月、事業費が4028万円と膨張している。1戸あたり6億3532万円をかけたケースもある。
佐須団地では1戸あたり1億8701万円を費やした。7世帯が入居し、被災者以外にも販売されているが、4戸分の区画が空いたまま。高齢者が大半の集落で、買い物に行く市街地までは車で7、8分。いつまで運転ができるか不安を抱えていた須田さんは「巨額を投じ、限界集落をつくったようなもの」と嘆いた。
須田さんは2日、病気で亡くなった。妻によると、一変した古里の光景に寂しさを感じていたという。
◆防災集団移転促進事業= 被災者らを高台、内陸部へ5戸以上などを要件に集団移転させる事業。自治体が自宅跡地を買い取り、津波浸水域などの居住を制限する。岩手、宮城、福島3県で約3万7000戸が、新たに造成された団地や災害公営住宅などに移転した。
引用元: ・【宮城】高台削って造成した団地、23世帯中入居したのは2世帯だけ 集団移転事業は1戸6億円超のケースも [七波羅探題★]
その上なら自由だろ
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