ウクライナ国内でコミックのベストセラーとなり、更にはウクライナ軍のザルジニー総司令官(当時)も自身のサイン本を手に取っている。
1人の同人作家の同人誌がウクライナでベストセラーに。
戦争とそのミームが生んだ数奇な話であるが、そこに至る経緯や裏話を当事者である松田重工氏に伺ってみた。
◼「翻訳させろ」と外国人アカウントから次々と連絡が
――なぜキーウの幽霊をテーマに漫画を描かれたのですか?
▽松田重工さん
戦争が始まってすぐにウクライナ空軍が全滅するかと思いきや、いきなり1人のパイロットが6機撃墜とか、あれを聞いたら心を掴まれますよね。
3日で終わると思われていた戦争でですよ。
――侵攻直後は、ウクライナ空軍は早々に作戦能力を失うとみられていましたね。
▽松田 ロシア兵なんかレストランの予約取ってましたからね
(注:NHKスペシャルで報じられた、ウクライナ大統領府近くのレストランをロシア兵が侵攻開始から数日後に予約していた事)。
それで飛行機の絵を描いとくかって描いたら、それがもう意外と評判がよくって。ちょうど、その頃から短編ストーリーを描きたいと思っていたんです。
人間ドラマのない戦争漫画で、シンプルなやつを5月のコミティア(オリジナル創作限定の同人誌即売会)も近いし、会場限定12ページのコピー本を出すか、というノリでした。まず2、3ページ描いたら筆も乗ってきて、20ページくらいの作品になりそうでした。
ネームを描いて出来たやつからとりあえずTwitterにアップしたら、一気に拡散してしまって。まだ出来てもいないのに、「翻訳させろ」と外国人アカウントからあちこちきました。
――最初から国外の反響があったんですね。
▽松田 ありましたね。みんなが求めていたんじゃないでしょうか。人の心を掴む設定だったし。ただ、みんな描くかなと思ったら誰もやらなかったですね。
――国内ではどうでしたか?
▽松田 国内では、コミティアの段階ではまだそんなに広がってませんでしたが、朝日新聞の記者がコンタクトを取ってきて、2022年12月7日に記事になりました。
その報道で一気に広がった感じがします。新聞の影響はデカかったですね。
◼マンションの壁に大きな絵が描かれるほどの反響に
――ウクライナ側からの接触はどのようにあったんですか?
▽松田 コミティアが終わってすぐでしたね。駐日ウクライナ大使館からメールがきました。ウクライナの出版社が翻訳を出したいとかいって、こちらと連絡を取れないから大使館経由で連絡をとったという感じだったと思います。
長い契約書も締結して、そこには「ウクライナ語版を出版したら2冊送ること」ともあるんですが、『キエフの幽霊』以外の本は送られていません(笑)。
最近、出版社から「作品を送りたいので住所を教えて」と聞かれたのでもうすぐ届くのかもしれませんが……。
――その反響はどうでしたか?
▽松田 現地で見てはいませんが、報道を見る限りはすごいみたいですね。マンションのデカい外壁に描いたりとか。たまにこちらが検索して出てきたものが「おおすごい」という感じで、あちらの動きは本当のところは掴めないですね。「ホントに売れているのかな?」って感じで。
――ウクライナ軍のザルジニー総司令官が『キエフの幽霊』ウクライナ語版にサインする写真もありましたよね。
▽松田 あれも自分で検索して見つけました。
――あれ、送られたとか教えられたとかじゃなかったんですね。
▽松田 たまたま私がウクライナ語で検索している時に見つけました。「お、本当にやってるわー」みたいな感じで。「今度ウクライナでチャリティーやりますよ、ザルジニーさんのサイン入りですよ」みたいなのがバーンと出てきて「こっちが欲しいわ」って。あれも100万円くらいで落札されたそうです。
それと、『キエフの幽霊』ウクライナ語版の売上の10%は寄付されるんだったかな。ストーブを空軍基地に送ると聞いています。
『キエフの幽霊』は本当に気まぐれとノリだけでやってて、それをたまたま面白いって言って出版したりなんだりしてくれる人がいて、翻訳をしてくれたり、中継したウクライナ大使館の人たちがすごいんであって、私はなにもやってないんですよね。
全文は↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7092f9847a00a9ba18cee01b2368a440ea61806
[文春オンライン]
2025/2/24(月) 7:12
引用元: ・なぜ日本の同人誌がウクライナでベストセラーに? [煮卵★]
どうしてくれんだよ
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