康局長が、昨年のGDP成長率を「5・0%」と述べた時、会見場はシーンと静まり返った。そして記者たちのくぐもったような顔、顔、顔。誰も声にこそ上げなかったが、おそらく「本当か?」と思ったことだろう。
新華社の速報を見た私も、目を疑った。あまりに「中国社会の実態」とかけ離れているからだ。
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冴えない「消費」と「投資」
続いて、製造業とサービス業の増加値が5%ラインまで回復したのは朗報だが、特に製造業に関しては、無理やり作って無理やり輸出している傾向があり、自然な経済回復からはなお遠い。
消費3・2%増、投資3・5%増というのは、昨年のGDP成長率目標5・0%から見て、かなり低い数値だ。中国経済の行き詰まりを表す特徴的な指標の一つと言える。また、「5・0%成長」に疑問の声を投げかける中国ウォッチャーたちに根拠を与えている。
ともあれ、中国経済を牽引するのは、消費・投資・輸出の「3頭馬車」なのに、5%を超えているのは輸出だけで(7・1%増)、いかに輸出頼みの一本足打法になっているかが分かる。「トランプ前」の「駆け込み輸出」が急増したことも大きい。
だが、20日に発足したドナルド・トランプ政権が関税を引き上げ、輸出が打撃を受けるのは目に見えている。国内の消費を何とかして引き上げないと、2025年の中国経済は、一層暗澹(あんたん)たるものになるだろう。
不動産関連のデータは、相変わらず悲惨で、「最悪」と言われた2023年から、さらに二桁減のデータが並ぶ。GDPの3割を占めると言われた不動産業のバブルは、もはや完全に崩壊したと言ってよいだろう。
「3大デベロッパー」が総崩れ
実際、「中国3大デベロッパー」と言われた恒大・碧桂園・万科のうち、恒大はすでに破綻。碧桂園は、遅延し続けていた2023年12月期連結決算を、今年1月14日にようやく発表したが、最終損益は1784億元(約3・8兆円)にも上った。万科については、16日に「祝九勝CEOが15日に警察に拘束された」と、中国の大手経済紙『経済観察報』が報じて、同社の株がさらに暴落した。
家屋の売れ残り面積は、この一年でさらに積み増しされ、すでに東京23区の面積の1・2倍以上、大阪市の面積の3・3倍以上に上る。日本政府が掲げている単身の住居面積水準25で測ると、実に3000万人以上が住める面積が空き家となっているのだ。中国政府は昨年5月以降、様々な手を打っているが、抜本的解決には至っていない。
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一方、昨年通年の物価上昇が0・2%で、足元の12月が0・1%というのは、明らかにデフレ局面である。12月の工業生産者工場出荷価格・購入価格が2・3%減というデータも同様だ。
まさにバブル崩壊後の1990年代の日本が歩んできた道である。だから中国は過去の日本を「反面教師」にすればよいわけだが、昨年9月以降、中国の経済専門家が過去の日本と比較すること自体を禁じてしまった。
失業率が5・1%というデータは、荒唐無稽である。同様に、所得が平均で5%も増えたというデータも、大いに怪しい。あまりに実態とかけ離れているからだ。
特に、一昨年夏1158万人、昨年夏1179万人、今年夏1222万人という大学・大学院の卒業生たちは、いったいどこへ就職できたというのか?先月1日に行われた「国考」(グオカオ=国家公務員試験)で、わずか3万人余りの募集に325万人も受験したというのは、何を意味するのか?
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さて、始めの疑問に立ち返って、「本当に5%も成長しているのか?」という問題である。先月3日、深圳で行われたある投資者会議で、国投証券チーフエコノミストの高善文氏は、次のように述べた。
「GDPは3%上乗せされている」
「物価、就業、GDPを細かく見て、不動産バブルの崩壊なども考えると、GDPの成長率は毎年、3%上乗せされている。すべての統計から3%ずつ引くと、どれも整合性がつくのだ」
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習主席自らが、世界の主要国際経済機関のトップたちを前に、「今年の経済成長目標を実現する」と宣言したのだ。この発言は、CCTV(中国中央広播電視総台)を通じて中国全土でも放映されたから、もし実現できなければ、世界と中国の前で「絶対的な指導者」が「ウソつき」となり恥をかくことになる。
この発言を聞いた時の康義国家統計局長と部下たちの心情は、いかばかりだったろう?彼らは「統計のプロ」であると同時に、習近平総書記に絶対忠誠を誓う中国共産党員でもあるのだ。
全文はソースで(近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長))
https://news.yahoo.co.jp/articles/48f715a52854fda04da02bff0aace4b8b077f9c7?page=1
引用元: ・【近藤大介】中国のGDPを巡るミステリー…「5%成長」は発表1ヵ月前に決まっていた!? [1/21] [昆虫図鑑★]
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