【辺真一】尹大統領と政権与党の支持率急上昇の５つの原因　５月の大統領選挙はどうなるかわからない

　韓国の大手世論調査会社「リアルメーター」が今日（２０日）発表した調査結果によると、与党「国民の力」が前週から５．７ポイント上昇し、４６．５％で、これに対して最大野党「共に民主党」は３．２ポイント下落し、３９．０％となっていた。両党の支持率は完全に逆転し、前週の「共に民主党」の１．４ポイントリードから「国民の力」の７．５ポイントリードに取って代わった。

　昨年１２月２３日に発表された「リアルメータ」の政党支持率の調査では「国民の力」は２９．７％だった。それに対して「共に民主党」は５０．３％と、「国民の力」を約２０ポイントも引き離されていた。なんと、１か月もしない間に与野党の支持率はひっくり返ったのである。

　参考までに言うと、もう一つの大手世論調査会社「韓国ギャラップ」が１月１７日に発表した調査結果でも「国民の力」の支持率は３９％に対して「共に民主党」は３６％と、逆転していた。

　政権交代についても１月１３日に発表された「リアルメータ―」の調査では「野党による政権交代」が５２．９％と、「与党による執権延長」（４１．２％）を約１１ポイント上回っていたのにこれもまた今日の発表では「与党による執権延長」４８．６％に対して「野党による政権交代」４６．２％と、逆転していた。

　尹大統領の支持率にも変調が見られる。

　尹大統領が昨年１２月３日に全斗煥（朝鮮人・ドゥファン）軍事政権以来、４４年ぶりに強権的な非常戒厳令を宣布し、国民から袋叩きにあった時の支持率は「韓国ギャラップ」が１２月１０日から１２日にかけて実施した調査では大統領就任（２０２２年５月１０日）以来最低の１１％まで下落していた。

　ところが、年が明けた１月３日、世論調査会社「公正」がインターネットメディア「ファイナンス・ツデイ」と「ザ・パブリック」の依頼を受け、実施した調査では尹大統領の支持率は３４．３％と、驚いたことに約３週間で２３ポイントも上昇していた。さらに１月５日に発表された韓国世論評判研究所（ＫＯＰＲＡ）の調査結果では尹大統領の支持率は「強く支持する」（３１％）、「支持する」（９％）を合わせて４０％に跳ね上がっていた。

　また、憲法裁判所で審議されている尹大統領の弾劾の賛否についても「エムブレインパブリック」や「コリアリサーチ」など４社が共同で行った調査では国会で弾劾された時は「賛成」が７８％、「反対」が１８％だったのが、１月９日の調査では「賛成」は６２％と、１６ポイント減らしたのに対して逆に「反対」は３３％と、１５ポイントも増えていた。

　尹大統領が強権の非常戒厳令を発令し、弾劾され、「内乱首謀者」として逮捕までされたのに政権与党が支持されていることに野党「民主党」をはじめ韓国国内のメディアでは様々な分析が行われているが、総じて言えることは以下、主な５点である。

　▲大統領の支持率１１％も与党の支持率２９．７％も下げ止まりで、これ以上下がることはなく、上がるのは当然の流れであった。「国民の力」のコンクリート支持層はそもそも３０％前後あったし、尹大統領は大統領選挙では４８．５％の得票率を得ていたので潜在力があった。

　▲尹大統領が談話や声明などを通じて国民に直接訴えたことにより同情、同調する機運が芽生えた。

　▲影響力のある保守ユーチューバが一斉に連日、大統領支持を呼び掛けたことで保守層が結集した。

　▲最大野党「共に民主党」が大統領代行の韓悳洙（ハン・ドクス）総理まで弾劾するなどあまりにも横暴で、「共に民主党」の政権奪還欲が国民の顰蹙、反発を買った。

　▲与党や保守メディアによる李在明（イ・ジェミョン）代表バッシングが功を奏した。

　憲法裁判所の弾劾裁判の結審が３月中に行われ、仮に尹大統領が罷免されれば、５月には大統領選挙が行われる。現状の与野党の支持率の推移ならば、必ずしも与党が野党に政権を明け渡すことにはならない。

　ただ、「国民の力」にとっての不安材料は尹大統領が逮捕された１９日に支持者らがソウル西部地裁に乱入し、起こした騒乱である。判決に不服を唱え、裁判所を攻撃したのはまさに暴挙で、韓国は国際社会に恥をさらした。当然、与党の支持率にも影響は避けられない。

　週末の世論調査が待たれるが、それでも与党が野党をリードしているならば、また大統領への支持率が下降しなければ、５月の大統領選挙はどうなるかわからない。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8b84bc2705c3bf4001fdb6d53b519f312f5ee2f8