重慶市にあるモデル教室でレッスンを受ける女性たち。中国では中高年向け市場への期待が高まっている(昨年12月)=大原一郎撮影
昨年12月、内陸部・重慶市の高層ビルの一室で、年配の女性約20人がモデル風の歩き方を練習していた。高さ10センチ以上のヒールの靴で、アップテンポの音楽に合わせて腰に手をあてるポーズを決めると、講師を務める元モデルの毛媛媛さん(43)が「素晴らしいわ」と声を上げた。
ここは国際大会で受賞経験がある毛さんが母親と2018年に開いた中高年向けのモデル教室で、生徒は定年後の50歳以上の女性が中心。市内14か所の教室にこれまで延べ約2万人が通った。毎年、海外に発表旅行に行くといい、昨年10月は欧州各国を巡った。19年から教室に通う聶菲さん(54)は、「私たちの世代は自分磨きのための出費は惜しまない」と生き生きした表情を見せた。
高まる期待
習政権は近年、「高齢者向けの製品やサービス、老後に向けた準備を含む経済活動の総体」と定義している銀髪経済を重視する姿勢を鮮明にしている。
習近平政権は「銀髪経済」重視している
全人口の5人に1人が60歳以上になる少子高齢化に加え、不動産不況を背景にした個人消費の冷え込みが景気に悪影響を与えているためだ。特に若者の間では、コロナ禍後の失業率悪化など先行きの不透明さから、節約志向が広がっており、習政権の「銀髪」への期待は強まる一方だ。
聶さんら1962~75年前後生まれのベビーブーム世代は、「お金も時間もあり、消費意欲が旺盛」(中国メディア)で、銀髪経済の主力と位置づけられている。2022年からこの世代の大量退職が本格化すると、各地に毛さんが運営するような生涯学習教室が誕生し、企業も中高年向けの製品を打ち出している。
習政権は昨年1月、サービス拡充やブランド育成など26項目にわたる方針を示して推進を指示。同年12月に開かれた25年の経済運営の基本方針を決める重要会議では、銀髪経済を発展させていく方針を確認した。
都市と農村で収入格差
一方、中国民政省が昨年10月に発表した60歳以上を対象にした生活状況調査の結果によると、都市部と農村部の平均収入には、21年時点で少なくとも3倍以上の開きがある。農村部の平均年収は1万4105元(約30万円)、中央値は5640元(約12万円)にとどまり、中国政府が定めた20年時点の貧困標準年収である4000元にすら届かない人も少なくない。
中国の60歳以上は35年頃に4億人を超し、全人口の3割以上に達するとされる。習政権は年金額の底上げや介護サービスの充実を掲げ、急速な社会構造の変化への対応を急ぐ構えだ。
◆銀髪経済 =主に50歳以上が対象とされ、共産党や中国政府の公式文書に明記されたのは2017年が初めてとみられる。上海・復旦大学の研究チームによると、市場規模は35年に約19兆1000億元(約411兆円)に達し、国内総生産の約1割を占めると予測されている。
読売新聞 2025/01/13 10:56
https://www.yomiuri.co.jp/world/20250113-OYT1T50009/
引用元: ・中国「銀髪経済」に活路、「自分磨きのための出費は惜しまない」中高年の消費拡大図る [蚤の市★]
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