「まさかこんな場所で」「AIが間違っているのでは」
2023年冬、神奈川県の湘南地区にある警察署。AI(人工知能)を活用した神奈川県警の犯罪予測システムがはじき出したデータに、署員らは首をかしげた。
「自転車盗のリスクが高い」と示された場所は、駅や商業施設もない住宅地のど真ん中。通常であればリスクが低いと考え、警戒対象とはしにくい。ところが数日後、AIの予測通り、自転車盗が発生した。
県警が犯罪予測システムの本格運用を始めたのは21年4月からだ。過去5、6年に起きた事件事故のデータのほか、天候や気温、ガソリン価格や地価などのビッグデータを基に、AIが自転車盗や特殊詐欺などの発生リスクが高い場所を時間帯ごとに予測する。
予測結果は、100メートル四方の区域別に色分けして地図上に表示される。このデータが県内の全54警察署に毎日配信され、署員が重点的にパトロールする。
既に成果も出ている。特殊詐欺の電話が相次いでいた県央地区で、「次に電話が入る」とAIが予測したエリアを署員が重点的に警戒。現金の振り込みに向かう高齢者に声をかけ、被害を未然に防いだ。性犯罪が連続発生していた川崎市内のある地区でも、予測で絞られた場所をパトロールし、犯人検挙につながった。
県警では、犯罪者に悪用されたり、リスクが高いとされた地域の住民に過度な不安を与えたりしないよう、予測結果を一般には公表していない。AIの活用について、県警生活安全総務課課長代理の倉田文二警視(50)は「最終的な判断の責任は人が負う」と強調した上で、「捜査や防犯活動を補助するツールとして非常に有効だ。客観的で高度な予測結果を活用し、効果的な警察活動を展開していきたい」と力を込める。
手口が巧妙化する犯罪に対し、警察当局はAIを用いて対抗している。
24年、社会を不安に陥れた「闇バイト強盗」。その対応にもAIが使われており、闇バイトを募集するX(旧ツイッター)の投稿を抽出して、警察官が警告メッセージを送っている。薬物取引や銃の製造法に関するSNSの投稿をAIで抽出したり、マネーロンダリング(資金洗浄)の可能性がある口座の取引をAIが自動判定し、捜査対象を絞り込んだりもしている。
24年度は、指紋鑑定にAIを活用するための実証実験も行われ、AI技術は人間の熟練の技能が求められてきた分野にも広がりを見せている。
河原淳平・元警察庁サイバー警察局長(60)は「今後、偽動画や偽音声を使った詐欺などの犯罪が広がる懸念がある」と指摘。「警察がAIを駆使して犯罪と 対峙たいじ していくことは不可避で、AIと協働し摘発する手法が拡大するだろう」とみる。
一方、AIの活用にはリスクも少なくない。AIによる犯罪予測に過度に依存すれば、その地域住民らに対して偏見や差別が生じたり、無実の人を誤認逮捕したりする恐れもある。河原氏は「誤った情報を示すなどAIのリスクも考慮し、透明性を確保した適正な運用が欠かせない」と話している。
読売新聞 2025/01/10 11:00
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250105-OYT1T50011/
引用元: ・「自転車盗のリスクが高い」と出たのは駅などもない「まさか」の住宅地ど真ん中…AI犯罪予測が的中 [蚤の市★]
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